海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2012.04.16 2012:04:16:18:24:05

 ふたつの「死因究明に関連する法案」が提出された春。あるいは「麻雀トライアスロン・雀豪決定戦」と「第70期将棋名人戦」など。

 そういえば最近行われた日本医師会の会長選挙でも、民主党寄りの原中会長から自民党寄りの横倉新会長へ交代しました。面白いのは一部メディアがこの交代劇を「医師会も小沢議員を切った」と報じたことです。小沢議員は今、政府の主流にいません。なので医師会の変化は「医師会の民主党離れ」と表現すべきでしょう。それなのにこのように書くメディアは野田政権を守りたいのでしょうか。するとなぜメディアはそこまでして野田政権を守りたいのか。そういえば野田政権は財務省に忠実な政権だという話は、いまや通説ですね。
 

 

 民主党から民衆のこころが離れていく様子が、あちこちで見え始めています。かくいう私も、死因究明関連の立法問題を見る限り、民主党に見切りをつけるべき時かなと感じています。かつて、ある民主党議員は「世の中を変えるには仕組み的に四年かかる。それまで辛抱して見守ってください」とおっしゃったことがあります。その説明を聞いてなるほどと思ったものですが、残念ながらその言葉に対する信頼は裏切られました。辛抱して見守っていたら、民主党自体が揺り戻してしまい、当初の言葉と違うことをやり始めてしまったからです。
 

 その好例が、前回のブログでも書いた、民主党政権発足直後に見直しを宣言した、医療関連死におけるモデル事業の復活です。二年間、見守っていたら、結局は元に戻ってしまいました。
 

 民主党政権は、こんな小さな政策変更すら、完遂できなかったのです。これで信頼し、見守ってくれ、というのは図々しすぎるでしょう。
 

 四年の辛抱が利かなかったのは市民ではありません。民主党の議員たちです。そのことが、今の民主党離れを加速させているということを、民主党の議員は認識すべきです。
 

 約束を守らなければ信頼をなくしてしまうのは、社会では当然なのですから。
 

 

 法医学者に死後画像を任せるとモラルハザードになる、ということはこのブログで繰り返し指摘してきました。情報公開原則を法案に規定すればいいのですが、立法に関わる国会議員と警察官僚はその条項は入れようとはしないでしょう。なぜならそうした情報隠蔽こそ、警察や検察組織が温存したいシステムであると同時に、彼らが抱える病弊の根本なのですから。
 

 法医学領域では、死因情報は捜査情報であるという名の下に現状が隠蔽され、レベルの低い司法解剖がまかり通り、監査もできなかった。法医学会が議員に働きかけて作ろうとしているこの法案は、そんな壊れたシステムに予算を注入するもので、穴のあいたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。その時に潤うのは法医学会上層部の一部だけ。たとえば二年前、警察庁がAi導入の一環として携帯型のエコー装置を各警察署に導入したことがあります。このエコー、どのくらい活用されているのか、警察官に尋ねたところ、部屋の片隅で埃をかぶっていますという返事でした。
 

 議論をせず、隠密裡にコトを運ぶのは、民主主義ともっともほど遠い態度だということを、警察官僚や法医学者が気づくのはいつの日なのでしょう。
 

 

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