2012.04.16
2012:04:16:18:24:05
ふたつの「死因究明に関連する法案」が提出された春。あるいは「麻雀トライアスロン・雀豪決定戦」と「第70期将棋名人戦」など。
2012年4月初旬、ふたつの「死因究明に関連する法案」が国会に提出されました。ひとつは自民・公明共同の法案、もうひとつは民主党の法案で、どちらも議員立法です。
民主党提案の法律は「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案」で、中心となり推進しているのは民主党の細川律夫議員。自民・公明の方は「死因究明等の推進に関する法律案」で中心人物は自民党の下村博文議員です。
この法案は2008年〜2009年にかけて構築された国会議員による通称「異状死議連」と、その後、2010年に警察庁が主管した有識者会議の提言を経て立案されたものです。そしていまだにあの時の法医中心の法案作りから一歩も外に出ていません。
自民・公明提案の「死因究明等の推進に関する法律案」で、死因究明制度全体の枠組みについて、二年の時限立法で考え、民主党の「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案」では警察関連の遺体に関する具体的な取り扱いを決定しています。
本来この法案は、民主・自民・公明ですりあわせ、ひとつにして提案すべきですが、ふたつ同時に提出されました。妙な話です。全体の枠組みを議論してから各論の法案を作るのが当然に思うのですが、野田政権、あるいは民主党政権は社会の基本ルールから逸脱しているように見えます。
もう滅茶苦茶です。
案の定、この法案には重大な問題が隠されています。死因を市民と社会に開示するという、市民社会の一番の要請について、まったく触れていないのです。
法案の問題点が生じた最大の原因は、法案作りの際、医学関係者としては法医学者だけにしか意見を聞かないという近視眼的な態度だったせいです。一応私は議連には呼ばれましたが、他の医学関係者はすべて法医学関連です。その後2010年に厚生労働省が主管した「Aiに関する検討会」では警察庁のオブザーバーも参加しましたが、警察庁が主管する有識者会議に、医療現場からも発言したいのでお招きください、と当時の検討委員で日本医師会常任理事が幾度も提案したにも関わらず、一度も招聘されることはなかったのです。
つまりこれらの法案は法医学者の言い分だけで作られた、警察関係者にとって都合のいい法案になってしまっているのです。その証拠に死因を調べた後、どのように市民と社会に情報開示するか、という項目がありません。これでは何のために死因を調べるシステムを充実させるのか、本来の主旨が失われているし、警察や法医学領域の隠蔽体質やミスを誘因する因子も改善しません。