海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2012.04.16 2012:04:16:18:24:05

 ふたつの「死因究明に関連する法案」が提出された春。あるいは「麻雀トライアスロン・雀豪決定戦」と「第70期将棋名人戦」など。

 市民に死因情報を提供することは担保しないくせに、法医学会関連施設や検査には予算をつけろ、というあまりにも露骨な法案です。下品に思えるのは、そう狙って書いている法医学会上層部や彼らをサポートしている議員の顔が見え隠れしているからでしょう。法医学者が提唱する「死因究明センター」を各都道府県単位に作り、予算を分捕りたいというのが真の願いに見えるのです。
 

 でも、本当にできるんでしょうか、そんなこと。
 

 法医学者は全国に百三十人程度しかいませんし、法医学者が専門医になるには最低でも四年は専門的に研鑽し、試験を通らなければなりません。だいたい、臨床医が足りないから医学生を増員しているというのに、どうして法医学者だけがそんなにぱかぱか増えるというのでしょう。
 

 なので案の定、すでに現在、各大学にある法医学教室に委託することが想定されています。
 

 つまり、ハコモノ優先なのです。しかもその中身は空っぽに近い。
 

 政権奪取直後、民主党は「コンクリートから人へ」が合い言葉でした。でもこの法案の流れを見る限り、予算取りのための法案を通し、予算を取り、内実は代わり映えしないものの看板の掛け替えにすぎない。まさに羊頭狗肉法案とでもいいたいものです。
 

 そんな法案も、「死因は迅速に遺族と市民社会に公開する」という原則をつけ加えれば、その評価は百八十度、反転します。果たして民主党は、あるいはこの議連を関わる議員は、警察の体制護持のためにおもねるのか、それとも市民社会の幸福のために汗をかくのか。
 

 市民とメディアのみなさんはそこを注目していきましょう。
 

 

 死因を遺族と社会に迅速、かつ適切に開示するなどという、やって当然のことができないのであれば、日本の法律自体が市民のためのものではないという間接証明になります。すると法律を根拠に仕事をしている官僚や議員は、権力の根拠を失ってしまう。警察官僚も国会議員も、市民の公僕です。そして「Ai診断は医療現場の専門家に委託し、その情報は医療原則に準じて、遺族と市民社会に早急に公開する」というのは市民の希望です。公僕ならば、この意見を新しく作られる法案に組み込むのは当然のことですし、簡単に出来るはずなのですが。
 

 

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