さて、問題をはらんでいる、千葉大法医学教室の発表抄録から引用します。
「2009年、千葉県が異状死体検案時のCTの有用性を認め、正式に行政解剖の一貫として正式に(正式に、という言葉がかぶっていますが、原文ママ)CTを依頼するシステムが稼働、以後CT検案は件の依頼にて有料で行われることになった。このシステムは状況に応じて県警が行政解剖または行政CT検案の要否を判断し、県を通して大学に依頼するというもので、行政解剖の場合はCTを撮影の上解剖、CT検案の場合はCTを撮影し読影後報告する。これ以降、司法・行政を問わず解剖前に全身CTを撮影する手順が確立し、現在に至る。撮影した画像はカンファレンスを行い教室員間で討論し、特殊な事例や判断の困難な事例等については、毎月開催される放射線科専門医との検討会で供覧している」
一見きちんとしたシステムであるかのように読めますが、実は大問題が含まれています。この報告からわかるのは、読影を誰が実施しているのか不明瞭だということです。後段で「特殊事例や判断の困難な事例については放射線科専門医との検討会に供覧する」とあるので、ふだん読影をしているのが放射線科医ではないことは明白で、すると法医学教室ですから、法医学者が読影していると推測されます。問題は「行政解剖の場合はCTを撮影の上解剖、CT検案の場合はCTを撮影し読影後報告する」という記述です。これは千葉大法医学教室では「CTだけで、解剖をしないと判断した症例が少なからず存在している」こと、そして「そのAi診断は、画像診断の素養に乏しい法医学者が行なっている」ということを意味しているからです。
以前も申し上げましたが、とある法医学教室からの法医学者が医師会のAi検討会の席上で発表した際、提示した画像読影を誤読、つまり誤診していた実例を目の当たりにしました。その誤診は、仮にその場に供覧されなければ、永遠に闇に葬り去られていたでしょう。千葉大法医学教室のシステムにはAiを誤診し、それをそのまま放置してしまう危険性が内包された、システム的に問題あるものになっています。
「放射線科とカンファレンスをしているから大丈夫」と言い訳をしているつもりなのかもしれませんが、それではシステムエラーを防げません。カンファレンスに供覧されるのが全例ではなく、「特殊事例や判断の困難な事例」だと「法医学者が判断した」ものですので、自分が「自信を持って行なった誤診」については検討の俎上に登らない。だから誤診は避けられないのです。
こんな不安定なシステムに有料で対応しているわけですから、千葉県もお人好しですね。冤罪を発生させかねないシステムを内包する質の低い診断に費用を払っているわけですから。
まさに、無知は罪、なのです。