海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2012.03.23 2012:03:23:18:30:09

ゾンビ企画、医療事故調査モデル事業は死因究明格差を拡大する。

 記事を読むと、さもモデル事業が良心的に運営し、政治にダメージを受けているかのように思えますが、実態は年間1億7600万円もの予算を使いながら、年間わずか二十例程度しか解析できず、しかも回答が遅いなどという問題点から、一時は事業仕分けの対象にまでなりかけた、というシステムなのです。年間費用のほとんどは調整看護師という説明係の看護師と事務所の維持費用で消費されています。モデル事業では解剖費用は一体あたり百万円弱だという報告がありました。べらぼうな額ですが、それでも年間二十体であれば総額二千万円です。残りの1億5千万円はどのように使われているのか。ジャーナリストであれば、そうしたところは追求できるはず。1億2000万円に減額されるのは当然で、まだ甘すぎるのではないでしょうか。
 

 しかもモデル事業の主体は東京都、大阪市です。記事も大阪です。以前から申し上げている通り、東京と大阪は監察医制度があるので死因究明制度はそこそこ充実し、合格点を差し上げてもいい地域です。そこに更にこのような「あぶく銭」を投入しようという考えが理解できません。
 

 記事にコメントを寄せた教授が在籍する藤田保健衛生大学があるのは愛知県で、やはりモデル事業が実施されていますが、以前ブログでも書いた「二歳男子術後死病理解剖拒否・冷蔵庫保存経費要求事件」を起こした名古屋大の足元で、遺族が医療事故死を疑ったのに、その事案はモデル事業に適用されなかったという、大問題を生じさせています。少なくともモデル事業擁護記事を書くのであれば、そうした経緯や背景などにも言及しなければ、中立公正とは言えません。少なくとも記者は、日本全体の死因究明制度についてあまりに不勉強、準備不足でこのような企画を執筆したのだと判断せざるをえません。
 

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