海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2012.03.23 2012:03:23:18:30:09

ゾンビ企画、医療事故調査モデル事業は死因究明格差を拡大する。

 まずAiに対する理解度の低さです。モデル事業の解剖をお願いするくらい意識が高い記者であるのなら、CTだけでなくMRIも依頼すればよかったのにと思います。「異状死届け出をして警察の求めで頭部CTを実施した」とありますが、異状死届け出とモデル事業の関係は、法律的に未整備です。それにモデル事業見直しの際、昨年四月に厚生労働省からモデル事業に対し、Aiの積極的導入を勧告されています。記事ではモデル事業ではなく「警察の求めで」Aiを実施したと明記しています。しかも、なぜか頭部だけ。これでモデル事業が、Aiをないがしろにしているという事実が判明してしまいました。
 

 極めつけは解剖医が解剖で心臓肥大、不整脈疑いという死因診断をつけたとありますが、不整脈は解剖では診断できません。不整脈診断には心電図検査が必須だというのは、医学生レベルの常識です。心臓が大きいという所見だけで不整脈の可能性に言及するのは、高度な死因究明システムの構築をめざすモデル事業としてお粗末です。記者は医学の素人なのでわからなかったのでしょうが、記者ならば周辺取材をすれば「解剖では不整脈は診断できない」という程度の初歩知識は得られたはずで、そうした取材すらせずに執筆した記事が社会にばらまかれるということに対する無神経さは、公器たる新聞に携わる方としてはいささか問題があるでしょう。
 

 記事でわかったことを医学的に明確、かつシンプルに書けば、次のようになります。
 

「この症例は、解剖を実施したが死因は確定できなかった」
 

 さらに解剖でわかったとされる心肥大はAiでも確定できます。これは同時に、警察主導のAi診断はレベルが低いという問題も露呈しています。その意味では、反面教師的な素晴らしさに満ちた、示唆に富む記事だといえましょう。
 

 医師の目から見ると、お粗末きわまりない診断と説明に啞然としましたが、問題意識が高い記者は、この程度のシステムを評価しています。実に不思議です

 

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