海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2013.03.07 2013:03:07:21:54:06

平成24年12月作製「診療行為に関連した死亡の調査分析事業の在り方」、あるいは「内閣府が主催する死因究明等推進計画検討会議事録」を読んでわかったこと。

 どうしてこんなことになってしまったのかと言えば、いいものをいい、と見極められる先見の明に欠けて、いつまでも自分たちの主張に固執し、他人の批判に耳を傾けず、気にくわないと司法を通じて言論を圧殺しても構わない、などとお考えの方たちが医療安全調査機構の舵を取っているからなのでしょう。

 

 

 だからこそ報告書では「調査分析にこれらの手段は必要であり、これらのための基盤整備が何よりも重要であるが、」(下線筆者)などと不明瞭な書き方をしたわけで、本来なら「調査分析には解剖と死後画像撮影が必要であり、これらのための基盤整備が何よりも重要であるが」と書けば、文意明瞭で字数もそれほど変わりませんので、そう書くべきでしょう。でも、死後画像については、積極的に言及したくなかったような書き方に思えます。あるいは、作成者の文章能力がきわめて稚拙だったかのどちらかでしょう。

 

 

 内閣府の死因究明問題に関する検討会では、医療安全調査機構とは違って、病理学会の上層部のメンバーが入っていない代わりに放射線学会理事が入っています。これはまさに市民社会が、病理解剖よりもAiに対して高い期待を抱いているということの現れです。

 

 この検討会でもひとつ、正さなければならない文言があります。

 

 それは「死因究明は最後の医療であり、公衆衛生、犯罪等見逃し防止、正確な死因統計に資するものである」という2009年に自民公明が中心となった異状死死因究明制度の確立をめざす議員連盟の提言が引用されている点です。

 

 この文言を用いるとなると、検討会は大いなる矛盾に遭遇し、身動きが取れなくなるでしょう。 

 まず死因究明は、医療ではありません。なぜなら医療とは「生きている人を、医学を以て治療する」ことだからです。死者を医学検索するのは、医療ではなく医学です。

 

 そしてもし仮にそれでも最後の医療だというのであれば、情報公開がセットになっていなければなりません。なぜなら本人の同意なくして医療は成立しないからです。そして本人が亡くなってしまった以上、代理人は遺族になります。そうした遺族への情報公開を書かずして法案を通してしまったことはひどい話です。どうしてそうなったかというと、「死因究明は最後の医療」なる言葉の発祥地は、とある法医学者だったからです。法医学会関係者が、費用を医療と擬し、厚生労働省から引っ張ろうというのが根底にあったのが、そもそものこうした誤用文章の出所だったのです。

 

 

続きを読む 12345678