海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2013.03.07 2013:03:07:21:54:06

平成24年12月作製「診療行為に関連した死亡の調査分析事業の在り方」、あるいは「内閣府が主催する死因究明等推進計画検討会議事録」を読んでわかったこと。

 すると調査分析の対象はむしろ死後画像単独症例が圧倒的に増えていくことになると思われます。それにしても昨年6月、議決された死因究明関連二法案の中で「死亡時画像診断」と謳われているのに、項目ではいまだに「解剖・死後画像撮影」として死亡時画像診断という用語を頑なに拒否し続ける意固地さにはほとほと呆れ果てています。6月に法案が通った半年後の12月に報告書が出ているので、医療安全調査機構は死因究明問題で重要法案が通ったにもかかわらず、そうしたことすらご存じないのでしょうか。これで本当にオブザーバーに厚生労働省が入っているのでしょうか。

 

 

 笑ってしまうのは「中央事務局を東京に一カ所、全国を7ブロックに区分し、各ブロックに事務局を設置する」とあり、「第三者機関による調査方法の決定」という項目では「24時間オンコール体制で報告を受けた第三者機関(ブロック事務局)がスクリーニングを行う」とあります。24時間オンコール体制などとうていできないことは前回のブログで現場の担当看護師さんが指摘していましたね。何と無責任なことを書くのでしょう。

 

 こんな報告書を出してくるこの医療安全調査機構は、本当に「医療界が一体となって運営する形の組織」なのでしょうか。画像撮影と画像診断は意味が違います。医療従事者であれば画像撮影には意義が少なく、診断に真の意義があることくらい常識です。よく見ると、この理事会には放射線学会の代表者は所属していません。死後画像撮影は単なる撮影だから放射線学会への顔立てなんてしなくていいと医療安全調査機構のお歴々がお考えだとしたら、あまりにも放射線学会を軽んじています。この報告書のキモは「死後画像撮影」を解剖と同列に扱うことにした点で、そこが従来の方針と比べると大きな方向転換になっているのにその専門家の学会の代表をメンバーに入れずに報告書を作成するなんて、本当に医療界で一体となった機構なのでしょうか。

 

 

 肩書きはすごいお偉いさんが揃っているのに、報告書の中身は医学的にはかなり杜撰です。基礎医学や弁護士の方ならともかく、臨床の最前線の学会のトップの先生方が名を連ねながら、いつまでも死後画像撮影と書き続け、法律にも使用される公式用語である死亡時画像診断と書かない点だけでも検討会の姿勢が窺えます。「撮影」と「診断」の重みの違いを判別しない文章を、日本の医学会のトップの方たちが書くなんて、日本の医学界の権威、地に落ちたり、ではないでしょうか。

 

 

 医師会の検討会の参考資料には、内閣府が主催する死因究明等推進計画検討会の議事録もありました。1回〜3回の前の民主党政権時のものです。第1回は挨拶だけで中身はありません。2回目の会議で注目すべき点は、民主党が医療関連死は除外して考えるというベースだったのを、いずれこの推進会議に組み込む方針であることを安森局長が明言しています。

 

 つまり医療関連死だけは法律から独立して特別扱いしてもらうために作られたモデル事業の、そもそもの前提が壊れているわけです。こうなると一体何のためにモデル事業を後継した医療安全調査機構は存在するのでしょう。

 

 第2回は関連省庁の警察庁、文部科学省、厚生労働省、海上保安庁の説明が主でした。興味深い数字もありました。今の死亡の現状が数値できちんと報告されているのです。

 

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