検討会の議論は二層構造になっています。法医学者が解剖制度にカネをよこせ、という主張。それから死因究明制度の土台はAiにするしかない、という現状。このままではまず、症例数の少ない法医学者関連の解剖(司法解剖は日本の死者の1パーセント以下)にカネを潤沢につけてから、実際にはAiに丸投げしそこにはカネをつけない、という流れになってしまうでしょう。
この構図は、実はすでに一回出現しています。それがまさしくモデル事業なのです。学会の偉い先生たちは臨床現場の最前線で医師が検案、死因確定にこき使われているという事実を体感していないから解剖主体の学会の人たちの言いなりになってしまうのです。モデル事業を後継した医療安全調査機構は、Aiだけでも引き受けるということを報告書に明記しました。でもモデル事業で使われた年間一億円以上、五年で五億円以上の税金の大半は解剖へ流れています。本来ならAiにも均等に費用が使わなければ、報告書の方向転換はおかしい。しかもこうしたことに気づかなかったのではなく、指摘されていながら無視し続けたのです。
ですから医療安全調査機構のシステムは、解剖に関しては大変手厚くモデル事業で研究されていて、しかもその結論が全国展開は無理、ということでした。そして新たに導入されるAiに関しては、モデル事業での事前研究はほとんどなされていないのです。
何と言う滅茶苦茶な「モデル事業」だったことでしょう。しかも、それを延命させるために、わざわざ医療安全調査機構なる、不透明な組織を作る。これを仕切っているのが、上に上げた、日本の医療界のトップの人たちだというのですから、日本の医療の未来は暗いかもしれません。