海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2013.03.07 2013:03:07:21:54:06

平成24年12月作製「診療行為に関連した死亡の調査分析事業の在り方」、あるいは「内閣府が主催する死因究明等推進計画検討会議事録」を読んでわかったこと。

 平成23年に亡くなったのは、125万3千人だそうです。そのうち、警察が扱った異状死体は17万4千件とのこと。つまり、全死者の13.8パーセントを警察が扱っているわけです。そして司法解剖の件数は8591件、実施率は4.9パーセントとのことです。

 

 一方、CT、つまりAiは平成23年中に警察庁に報告された事例だけで5065体実施されていることでした。報告されていないものも考えると相当数に達していることは明らかで、警察以外で実施される数値を合わせれば、完全に解剖の実施数をAiが越えるだろうと推測できます。この伸び率を考えれば、警察の症例に限定しても、ここ2、3年でAiの実施数が司法解剖の実施数を上回るであろうということは充分予想されます。

 

 こういうしっかりした数字を元に、制度を考えることは大変重要です。そして効果的な費用配分を考えないと、不利益を蒙るのは私たち市民ひとりひとりなのです。

 

 

 監察医制度のおかしな点も指摘されています。

 

 東京都二十三区は常勤12名、非常勤49名、合計61名の法医学者が年間2624例の解剖を実施したそうです。しかし横浜市では4人の非常勤の監察医が1756体の解剖をしているのだそうです。これは警察庁の資料の正確な数字ですが、すると横浜市の四人の監察医は年間400体を越える解剖をしている計算になります。非常勤でこれだけ勤まるとは、どういう解剖をしているのか興味があります。これを事実とすれば、4人の非常勤の法医学者がいれば、1700体の解剖が可能になります。日本には百五十名くらい法医学者がいますから、単純計算すれば日本の法医学者が横浜市監察医務医の非常勤の法医学者なみに働けば、年間6万体以上の解剖に対応できる計算になります。これなら異状死の約40パーセントに達しますが、これはふだん法医の先生たちが言う数字を遙かに上回っています。検討会ではかつて警察庁主導で法医学者が欧米各国の死因究明制度を視察にいったということも書かれていましたが、灯台下暗しで、なんと日本の横浜市にそのように優れた効率的な死因究明制度があるのですから、もっとアピールしモデルとして提示するべきではないでしょうか。海外視察など、横浜市のケースをきちんと解析してから行くべきでしたね。

 

 

 法医学会の主張を受け入れれば、横浜市監察医制度における解剖が手抜きだというしか整合性はありません。ですがそうした内部告発は法医学会から正式に上がってきたことはありません。すると横浜市以外の法医学者がサボっていることになります。

 

 神奈川県監察医制度の手抜き解剖を是正せずに焼け太りしようとしている、あるいは大部分の法医学者がサボっている。この数字からはどちらかの可能性が示唆されます。どちらにしても、大問題であることは間違いありません。

 

 法医学会は内閣府の検討会で新しい組織設立を訴えるよりもまず、現存の組織に存在しているこうした問題にきちんとケリをつけて、そこを是正してから新たな組織作りを提案すべきでしょう。

 

 

 平成九年に発生した「保土ヶ谷事件」では、解剖したと横浜市監察医が主張し、遺族が解剖の傷がなかったため民事裁判に訴え、証拠として提出された臓器が他人のものだったことが鑑定で判明しました。こうしたデータを総合すると神奈川県監察医務院は解剖数を水増しして報告している可能性も考えられます。

 

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