それにしても死因究明の仕組み作りに、病理解剖を業務とする病理学会代表が招かれないなんて情けない話です。どうしてそんなことになってしまったのかといえば、Aiに対し病理学会上層部がやった非常識な対応により、社会からの信頼を失ったのではないでしょうか。でなければ解剖を業務にしながら、死因究明制度の検討会に代表者が招かれないなどという状態の説明がつきません。そのあたりの事情は拙著『ほんとうの診断学』や、過去のブログをお読みいただけるとわかると思いますのでここでは控えておきます。いやあ、大人になったなあ、私。
さて、昨年六月に成立した死因究明関連二法案は、ひとつは自民党が推進した時限立法である死因究明推進法で死因究明の枠組を決めるもの、もうひとつは警察関連死因究明法で、民主党が推進し、警察の実地用の法律です。この二法は情報公開について条文にまったく記載がない、冤罪の素地になりかねないものだということは、このブログでも指摘してきました。しかしこの法案を推進した民主党議員は誰一人として、こうした指摘に耳を傾けようとせず、結局、自民党議員の熱意によって法案に付帯決議は何とかつけられたものの、修正されずに通過してしまいました。今、この法案成立を積極的に推進した議員たちのほとんどは、昨年暮れの総選挙で落選しています。
そんな中、上記の死因究明に関する検討会は自民党が推進した時限立法である死因究明推進法に基づいて設置されたもので、重要な意味を持っています。自民党でこの問題に早くから対応していた橋本岳議員が国会議員に返り咲き、事務局長になったそうなので、こうした問題は改善されるかもしれません。選挙公約にわざわざ、死亡時画像診断の導入や費用拠出の検討を謳ったくらいですから、期待はしているんですよ、自民党さん。政権交代直後にモデル事業の費用はAiにつけかえる、などと勇ましいことを言いながら、結局はモデル事業ひとつ潰せなかった民主党さんの轍は踏まないでくださいね。