海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2013.02.19 2013:02:19:16:44:00

モデル事業が取材を受けないわけ、あるいは司法解剖が増えないのに問題にされないことなど。

 さて、モデル事業について、某週刊新潮さんを通じて取材を依頼したところ断られたということを以前書きました。するとブログを読んでくださった大阪事務局の元調整看護師で、少し前に辞められた方から、お話してもいいですという声がかかりました。現場の生の声を聞くのは取材の基本ですので早速お話を伺うと、驚くべき実態がボロボロ出てきました。「これってブログに書いていいんですか」と尋ねると「どうぞ、事実ですから。こうしたことを本部に問題提起してきたのですが、『機構に文句があるの?』『大阪からの電話は取らないことにしていたの』と言われ、どうしようもなかったんです」とのことでした。その方は少しでも機構をよくしようとして、あるいは納得できないからいろいろ尋ねると、そんな対応をされ、最後はどうしていいかわからなくなってやめたそうです。その話の中には、けっこうびっくりするような事実がたくさんありました。

 

 まずびっくり仰天の事実から。数がとても少ない調整看護師の中に、病理医の奥さん、医師の奥さん、弁護士の奥さんがいるそうです。しかも、そうした調整看護師さんは本部でも「奥さま」と呼ばれ、とても大切にされていたとか。この機構は各学会や医師会が資金援助しているわけのですから、なんともめぐまれた奥さま方ですね。

 

 この厳しいご時勢の中、巨額の血税を投入しているモデル事業でこんな人選が行われているなんてほんとに驚きました。これがモデル事業を病理学会上層部や弁護士が死守しようとしている理由でしょうか。医師会はこのモデル事業に援助金を出していますが、こうした現状を把握しているのかどうか、伺ってみたいです。学会全体で病理医や医師や弁護士の奥さんの雇用を確保しているわけですから、医療安全調査機構とは、実にアットホームで、身内に優しい温かい組織ですね。

 

 この話が本当なら(そしてこれは機構に属していた人からの話ですからおそらく本当なのでしょうが)、医療安全調査機構が私の取材を避ける理由もわかるというものです。でも、そもそも医療安全調査機構は、医療事故、もしくは医療事故疑いの案件について、医療施設側と遺族側の両方に説明するのが重要な任務のはず。しかも機構は税金という公金や各学会、医師会の拠出金で維持されている。そんな組織が自分たちの内実についての取材依頼を拒否するなど言語道断ではないでしょうか。取材すら受けられないという体質で、医療事故に明晰な対応ができるでしょうか。

 

 医療安全調査機構は、本部と東京事務局が共同で浜松町に事務所を構えています。そこには常勤、非常勤合わせ十名弱の人が勤務しているのでらくらく成立するのですが、大阪事務所は常勤一人、非常勤二人で頑張っていて、調整看護師が、事例受け入れの調整から謝金の振り込み、あるいは事務仕事まで一切合切をやらされていたそうです。ゆとりある東京事務所、本部と大違いなので大阪事務局はせめてもうひとり、常勤の事務職がほしいという、至極もっともな要望をしたのですが、そうした要請は無視されたそうです。

 

 Aiに対する態度も二転三転し、本部からAiを推奨する文章が来たから対応してやっていたら、しばらくして「それ(Ai)は誰の指示でやっているの?」という叱責口調での問い合わせがあったりして「何が何だかわからない」とおっしゃっていました。その部分について私は背景がよくわかっていたので詳しく説明したら、納得されていましたが。

 

 

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