海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2011.06.11 2011:06:11:14:01:58

厚生労働省、ついにAi実施へ。

5)週刊現代で『スリジエセンター1991』連載開始。イラストは木内達郎さん。いつも話が尻切れトンボだとか完結していないと非難集中ですが、今度は黒い西暦シリーズ(『ブラックペアン1988』、『ブレイズメス1990』)の三部作完結編、そんな批判はさせません。いや、させないはず。いや、批判されないような作品になるといいなあ......。

 

6)海堂ラボ、6月はMRIの世界的権威、中田力先生と、破綻した銚子市立病院再建のために尽力中の白濱龍興先生。

 

 中田先生は、医療改革のために日本に戻ってきたけれど全敗だった、と告白されました。ううむ、中田先生を以てしてもそうなら、Ai闘争が迷走するのもやむなしか。オンエア内容も面白いですが、アーノルド・シュワルツネッガーの離婚の深層など、控え室で多岐にわたる雑談がすさまじく面白かった。放映できないのが残念ですが、放映したらCIAに目をつけられてしまったかも。

 

 白濱先生は銚子市立病院の現状をお話しいただきましたが、予想していたよりも現状ははるかに好転していました。そうした早い改善が達成されたのは白濱先生が長らく自衛隊病院に勤務されていたことと関係するかもしれないなあ、という感想を持ちました。痴呆医療再生のヒントが、お話の中にはたくさんありました。

 

 続いて7月分も収録しましたが、元衆議院議員の橋本岳先生と、「川崎病」の発見者、川崎富作先生。橋本先生は意気軒昂で、先日もAi主体の死因救命制度を、という公論を発表されていました。そんな橋本先生の元に、法医学会提唱の死因究明制度について警察庁から「ご説明」があったそうです。どうやら警察庁はなんとしても法医学研究所にAiをもっていきたいらしい、とひしひしと感じさせるエピソード。橋本先生が返り咲き、首相になった暁には、私を厚生労働大臣に指名してくださるという口約束をされたので「三ヶ月の期限限定で、Aiシステムを導入して辞任します」という条件で受諾しました。それにしても意気軒昂、政治家は国会よりも市井にいた方が、現実と合った真の政治家になれるのかも。

 

 川崎先生のお話はわかりやすく、国試時代になかなか理解できなかった川崎病について一発で理解してしまいました。隣のアシスタント、駒村さんもぼそりと「これならあたしも川崎病を診断できるわあ」などと不遜な発言。でも医師国家試験はそんな甘いものではありませんから。返す返すも残念なのは、二十年早く川崎先生の講義を受けていれば国試が少しはラクになったのに。小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群だなんて、名前を覚えるだけで気息奄々だった当時をふと懐かしく思い出しました。興味深かったのは、川崎病の研究班が当初、当時の小児科の権威の東大教授が概念を認めなかったため五年も停滞した、というお話。うむ、あの頃からちっとも変わっていないのか、東大。

 

 以下、拝受した本(『川崎病は、いま――聞き書き川崎富作』木魂社)の一節を引用します。

――そこで、クロードベルナールの『実験医学序説』の一節を引用させていただく。「自分の学説、或いは自分の構想のみを偏重する人は、ただ単に発見するのに不適切であるのみでなく、また至って悪い観察をするのである。彼は必然的に先入観を以て観察する。また実験を組み立てたときにも、その結果の中から自分の学説の確証だけを見ようとする。この様にして彼は観察を歪め、極めて大切な事実をも、自分の目的にそぐわないという理由をもってしばしば無視する」(岩波文庫)正しい観察をするには常に先入観や嫉妬心、邪心があってはならない。無心に観察した臨床家の目にそう大きな狂いはないはずであるが、本物かにせ物かはいずれ時が解決してくれるであろう。

 

 

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