そういう基本的な議論をせず、いたずらに些細な用語批判を垂れ流しているのは学術団体としていかがなものか、と市民社会からは思われてしまうでしょう。
公式にAiセンターを名乗る施設は、札幌医大、東北大、千葉大、群馬大、神奈川歯大、福井大、近畿大、佐賀大、長崎大とすでに全国九カ所に存在しています。内容としてほぼAiセンターと名乗れるような施設はその倍、存在しています。
ならばニュースで伝えられた「各都道府県に専門窓口を設置して、24時間体制でAiを実施できるようにすべき」という文章は、「Aiセンターを都道府県単位で設置すればいい」とすればわかりやすく提言は「Aiセンターを全国に設置しましょう」とすればいい。
でも学会上層部や厚生労働省医療安全推進室がAiという用語を無視し、それが市民社会に受容された後もずっとアレルギー反応を示し続けたためか、こうしたシンプルな提言になっていない。最終提言作成にあたり、学術的に協力したS先生が興味深いことを言っています。「外傷性死において、解剖所見とAi所見の一致率は約86%であった」という記述部分に関して、厚生労働省担当官からS先生に「警察庁から数字が高すぎるのではないか、とクレームがありまして」と言われたというのです。これは論文に裏付けられた数字で、根拠の文献も明示してあるのですが。
検討会のオブザーバーではあるものの、正式メンバーでない警察庁がそこまで口を出してくるのはおかしい。それに唯々諾々と従う厚生労働官僚も変だ、ということに気づかないのが不思議です。そうした議論は、それこそ検討会の場で行わなければ何のためにあれだけの人を一同に集めたのか、理解できません。
警察庁は、自分たちの提言をまとめるにあたり有識者に医療従事者をひとりもいれていません。一方、Ai検討会には法医学会代表が入っています。このあたり、警察庁はもっとオープンマインドで対応しないと、市民社会からの信頼度はあがらなくなってしまう。少なくともAiに関する提言を行うならば、放射線科代表の人間を入れなければ、実情と乖離し、法医学会だけ利するような、社会に不適合を起こす提言になってしまうということだけは、断言できます。