海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.05.20 2011:05:20:22:32:34

法医と警察はAiただ乗りを強行するつもりなのかしらん。

 警察の主導でAiが社会導入された場合、市民がデメリットを被ることになりかねません。次のエピソードは板橋区医師会の講演会で講演した時、会場から出た質問です。ですので裏は取れていませんが、類似の話はあちこちの医療従事者から聞かされるので、警鐘の意味を込めて載せます。ことの真贋や是非については読者のみなさんがご自分でご判断ください。

 

 板橋区医師会主催の講演会は1200名の参加者で、久しぶりの4ケタスピーチにやや緊張......などしなくなってしまった私でした。講演の後の質問は裏付けを取っておりませんが、1200人の参加者が聞いているので、そうした発言があったのは事実だと証明してくれる証人が1200人はいるはずです(笑)。

 

 質問者の友人のお父さんが、千葉県の海の方の町でお亡くなりになったそうです。工事現場で働いていて、同僚の方が作業中に転んで頭を打ったのを見ていたが、本人は大丈夫だ、としばらく活動していたそうです。ところが具合が悪くなり、そのまま不帰の人となってしまったのだそうです。そこで千葉県警が死因究明のため解剖を勧めたのですが、突然の家族の死に動揺した遺族は、解剖を拒否した。遺族に選択権が与えられたことから、事件性は乏かったのでしょう。

 

 すると警察官はAiを勧めてきた。遺体を損壊せずに調べられるので、遺族は一も二もなく同意し、近くの病院でCT撮影したそうです。その結果、事件性はない、と判断されました。

 

 問題はここから。警察は突然「遺体を調べるという、病院にとって好ましくない検査を行なったのだから、検査費用を払ってあげて下さい」と言い出したそうです。その額、なんと十万円。遺族は事前に費用の話を聞かされておらず、たいそう驚いたそうです。会場の質問された方は、「これはAiの標準的な話ですか」と質問してきました。 

 

 さて、回答です。Aiを警察の主導で導入した場合、費用負担が遺族に押し付けられてしまう可能性が高い。そうでなければ、医療施設に押し付けられます。警察庁は死後CTに予算をつけたと喧伝しますが、司法解剖につながる場合のみで、たとえばCTで死因がわかって解剖せずに済んだ場合は費用を出しません。これって、おかしいと思いませんか? それだと、警察の出先機関の法医学教室にはAiの費用は支払われ、解剖と連動しない、だからこそ真に有用なAiに費用が支払われません。

 

 こうした構図だと、警察庁はAiに対し費用拠出を行わず大量のAiを医療現場に押しつけられる、あるいは費用負担を遺族に押しつけることができるわけです。その典型例が講演会の質問で出てきた遺族のケース、というわけです。

 

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