海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.06.11 2011:06:11:14:01:58

厚生労働省、ついにAi実施へ。

 驚いたのは最後の回に、内科学会代表の先生がAiという用語に異議を唱え、それが内科学会理事会で問題になったという指摘を冒頭にしたことです。丸一年、死亡時画像診断という言葉が冠についた検討会に、内科学会を代表する理事として参加しながら、この期に及んで、いまさら死後画像という用語との齟齬を持ち出したわけです。

 

 内科学会がこの数年、Aiに関する講演会や勉強会を行ったということは寡聞にして知りません。一方Aiに関するシンポジウムが毎年のように行われている放射線学会は、Aiを正式の学術用語として認知しています。実際行わず、勉強もしていない人たちが口先で批判しているわけです。

 

 私がびっくりした理由はもうひとつあります。その先生は自治医大の内科の教授です。自治医大では4月からAiセンターが正式に創設されるという話があり、自治医大の医療安全に携わっている長谷川剛先生が2月に公言されていたからです。

 

 会議後にご本人に確認したところ、そのことはご存じでした。ということは、ご自分の施設でのAiセンターの創設予定を知りながら、用語に文句をつけるという理解不能な行動になってしまう。理由は憶測できます。たぶん内科学会の意向が強く働いたのでしょう。内科学会はモデル事業の主体ですが、Aiが前面に出るとモデル事業が潰れてしまう。だから用語問題という、市民からみてどうでもいい重箱の隅をつつきAiの進展を遅らせようとしたのではないか、などと思えてしまうのです。そこには市民社会に対する学術責任という姿勢は乏しい。それが残念です。

 

 でもこの最終報告書案からは、「モデル事業と協調し」という文言が消滅しました。これは同時に厚生労働省がモデル事業に完全に見切りをつけた、ということでもあります。これを受け、医療安全調査機構も4月22日、モデル事業縮小方向を打ち出しています。運営会議で反対し、押し戻すという醜態をさらしていますが、少ない予算で実施できるようなシステムを作らないと、五年で六億円そしてたった百例しか解析できなかった前モデル事業の失敗の轍を踏む事になります。運営会議で反対した先生たちは、その失敗ときちんと向き合っていれば、そんな反対はできないはずなのですが。

 

 五年ですよ? それで結局、普遍化するシステムはできなかった。そんな人たちが、今更Aiも使って何とかしようなどといっても、無理だと思いますけど。

 

 こんなことがまかり通れば、これは後に、厚生労働省と医療安全調査機構は癒着しているのではないか、などと疑われかねません。ご注意を。

 

 でも、メディアの方々で、そうしたことを読み解いた人は、報道を見る限り皆無です。メディアの知性も問われる時代となりました。記事を書く前に拙著「ゴーゴーAi」をお読みになることをお勧めします。

 

 日本内科学会は一部理事がAiに対する用語批判をし、それをあたかも内科学会のコンセンサスであるかのように公式の場で喧伝する前に、Aiに関するフォーラムなりシンポジウムを企画し、公開の場で議論すべきです。その際はわたしにも声を掛けていただけたらと思います。Aiという用語批判をするなら、それは必須です。Aiという用語の提唱者はこの私なのですから。

 内科学会のみならず、Aiに関しては外科学会も取り上げていません。

 

 病理学会は私が提唱者なので、2005年までは私が企画してワークショップが数回開催されましたが、モデル事業が始まった2006年以降はAiに関するフォーラムは設定されていません。ちなみに日本法医学会はAiという用語を決して認めようとしない。こうしてみるとモデル事業に深く関与していた学会がおしなべて、Aiという用語にアレルギーを示しているという事実が鮮明に浮かび上がってきます。

 

 来年の外科学会の大会会長は千葉大の恩師の宮崎勝教授であるせいか、学会運営を任された仲介団体から特別講演依頼の内々の打診があり一応受諾しています。でも正式依頼ではないので、果たしてどうなることやら。

 

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