海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.02.24 2011:02:24:23:18:55

「死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会報告書(案) 」の問題点

 一年間検討した厚生労働省検討会の報告書案が出ました。年末に発表される予定が年明けに延び、3月14日という年度末ぎりぎりの最終検討会で決定される流れです。対応が遅いのは、厚生労働省がやりたくないのでは、という疑惑が。Aiの提言をされると、厚生労働省医療安全推進室お気に入りの診療関連死に関するモデル事業に予算をつけることが難しくなってしまう。でも姑息な方法で自分たちの失敗企画を延命すると、市民社会にとってデメリットの更新になる。厚生労働省・医療安全推進室は「室益」を重んじるあまり市民益を見失っています。

 厚生労働省・医療安全推進室がまとめた」検討会報告書案では厚生労働省の医療安全推進室の意識の問題が浮き彫りになっています。厚生労働省がいかにAi検査の実費費用を拠出せず、医療現場に業務だけ押しつける枠組みを作ることに腐心しているかが手に取るようにわかる文章ですので、逐一批判を加えていきます。そんなめんどくさいことをする理由は簡単。国民の貴重な税金を用いながら、広く国民のためを思わない試案を小手先でごまかし発表しようとしているからです。欺瞞を見破るには詳細な知識が必要ですが、記者にそこまでの基礎知識はないので役所の発表を垂れ流してしまう。無批判な行政発表の垂れ流しほど、今の時代に害悪はないのですが。 

 

  では参りましょう。海堂尊、厚生労働省試案をぶった斬り。

 

  この報告書、放射線科医が主体の部分はよくできてます。でも費用拠出に関し、厚生労働省がちゃちゃを入れたところはひどい。そんな玉石混淆、呉越同舟みたいな報告書案であることをまずご理解を。厚生労働省事務局の作成案に委員が相当ツッコミをいれていますから、最終的にどう変わるか確認するのも面白い。ここに書かれているのはAiに対する費用拠出に関する官僚の素の考えです。Aiに関しカネは出さないが現場できちんとやりなさい、というわけで、官僚のみなさんはまず検査実施の際は対価を払うという社会常識をベースにした常識的な社会システムを作っていただきたいものです。
 

 

死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会報告書()
 
はじめに
厚生労働省;我が国における死因究明の取り組みは、死体の発見場所や所見の判断によって体制が異なり、医療機関で亡くなった場合には、遺族等の承諾のもと病理解剖が行われるが、病死や自然死を除いた死体(異状死)のうち、犯罪性が疑われる場合には、警察により司法解剖が行われ、それ以外の場合には遺族等の承諾のもと行政解剖が行われる。死因を究明することは、大切な家族等を亡くした遺族の家族等が亡くなった理由を正確に知りたいという思いに答えるだけでなく、医学の発展や公衆衛生の向上、さらに、犯罪死の見逃し防止等の観点からも重要である。近年、遺族の理解が得やすく、その心情に配慮した死因究明の手法の一つとして、遺体を傷つけることなく実施可能な死亡時画像診断の活用に対する関心が高まっている。死亡時画像診断においては、遺体を撮影・読影することで、体表のみではわからない体内の情報(骨折や出血)が得られることから、犯罪死の見逃し防止等に役立つ手法の一つとしても評価されつつあり、さらに、解剖を行う前のスクリーニングとして利用することにより、死因究明の精度の向上に寄与するのではないかと考えられている。本検討会においては、異状死や診療行為に関連した死亡の原因究明の判定率を高めるため、死亡時画像診断の活用方法等について、平成226月から検討を開始し、9回にわたる検討を経て、今般、その検討結果を報告書として取りまとめたので、ここに報告する。なお、本検討会における死亡時画像の撮影に使用する機器としては、現在、全国の医療機関等に1万台以上整備され、国民がその恩恵を等しく受けることができると思われるCT(コンピューター断層撮影)を想定している。

 

    おおむね内容はよさげですが、一点問題が。死亡時画像診断に(=Ai, Autopsy imaging)と付記して欲しい、と再三再四、日本医師会やAi情報センター山本正二先生が意見を述べたにも関わらずAiという単語は入っていません。これは厚生労働省・医療安全推進室がAiという単語にアレルギーを持っているからです。Aiという用語を使わないと自律的に医療現場で立ち上がったAiセンターについて記載できなくなります。報告書案には全国7カ所で運用開始されているAiセンターについて一言も触れていません。Aiセンターは自発的に立ち上がっています。報告書でその事実を伝えないのは意図的な情報落としなのでは。それにしても厚生労働省・医療安全推進室は、Aiという単語が本当にお嫌いなんですねえ。(しみじみ)
 

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