海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.03.15 2011:03:15:15:05:09

東北関東大震災の所感と、癒着という表現についての考察

 今回は二本立て。実は3月11日に一本「癒着という表現についての考察」を書いていたのですが、震災が発生したので、そこにもう一本、急遽書き足しました。

 

まず、今回の災害にあたり、被災者の方々には心よりお見舞い申し上げます。

 

東北関東大震災が発生した時、私はドクタージェットの取材で札幌に滞在していました。北海道庁に取材後、午後二時には札幌医大の救命救急の浅井教授の取材をしておりました。続いて、丘珠空港での航空会社の方にインタビューをする流れで、タクシーで向かおうとした時に、深度3くらいの揺れに遭遇しました。車の中でどうも宮城の方がすごい地震だったらしい、とわかり、担当者が連絡を取ったところ、機体の確認が必要になりそうということで取材のキャンセルが入りました。そのまま丘珠空港でテレビを見ていたところ、「東京では九段会館の屋根が崩落し、死傷者が出ている模様」というニュースが流れました。実はその前後に東京にいる山本先生に別件で携帯を掛けたのですがまったく反応せず、北海道は電波が悪いなあと思っていたのですが、大変な事態で携帯電話がパンクしているらしい、とようやく把握しました。空港の電話で自宅に掛けたのですが、すでに電話がつながりにくくなっていたのであっさり諦めました。この時点ではメールの送信もだいぶ難しくなっていました。さて、その後はホテルに戻り、ひたすらテレビでの情報収集に明け暮れたわけですが、札幌は平静でした。空港は混乱していたようですが。

 

翌日は手稲渓仁会病院にドクターヘリの取材にいく予定でした。到着すると、すでに昨晩の内に災害派遣隊(DMAT)が構築され、高橋センター長は早朝五時に新千歳空港から花巻空港に向かったとのこと。迅速な対応です。そこでお邪魔にならないように、端っこで渓仁会での対応を見学させていただきました。渓仁会からは医師ふたり、看護師ふたり、薬剤師ひとりを派遣していました。幸い、札幌市内の救急は大変落ち着いていたようでした。この時、いろいろな情報を求め、渓仁会にも連絡が入っていました。こうした情報の集約スポットがあることは大切で、何より重要なのは看板ではなく、日頃からそうしたことに対応しているという周辺からの信頼感なのだなあ、と思いました。災害に関する情報の集約化ができていないようで、現場に派遣された高橋先生からも患者がちっともこないけれどもどうなっているんだ、という連絡が時折入っていました。しかしこれも現場の惨状を考えれば情報網と交通網が寸断されていたためにやむなしだったわけです。このように多少問題はあったものの、救急現場では激甚災害に対し妥当かつ適切な対応が行われ、それをバックアップできる体制が準備されていたということは明白です。こうした医療現場で行われているプラス面を、メディアはあまり伝えませんので今回、書き残そうと思ったわけです。北海道では災害に対する医療バックアップ体制はきちんととられていました。こうした報道に際してはメディアはまず、賞賛と感謝の言葉を発するべきです。ひとこと、素晴らしいですね、でいいのです。

 

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