こうした科学的姿勢はミイラに対してのみ用いられればいいのでしょうか。まずAiを実施することが死因究明の原則だという私の主張を、この番組が支持してくれているように思えたのは、Ai考古学とでもいうべき学問エリアが確立しつつある現代では当然の流れなのかもしれません。
ちなみに「アイスマン」の死因についてのエピソードは拙著『ほんとうの診断学』(新潮選書)192ページでも記述しています。興味を持たれた方はご一読してみてください。
余談ですが番組ガイド役は、映画「チーム・バチスタの栄光」で白鳥圭輔役を演じてくれた阿部寛さんでした。であれば、矢じりが刺さったCT3D再構成画像を見て「おお、Aiが古代人の死因を明らかにしたのだ」くらいのアドリブを入れてほしかったものです。さぼるな、白鳥(笑)。
でもNHKスペシャルはアドリブ厳禁なので、仕方がなかったのでしょうけれど。
近況です。
1)『海堂ラボ vol.2』(PHP新書)、まもなく発売です。今回も多士済々、この本を読んでいると日本の医療の未来は明るく思えるのですが。そしてみなさんが購入してくださらないと、vol.3が刊行できなくなります。これは日本の文化的損失になりますから、そこのところよろしく。
2)『トリセツ・ヤマイ』(宝島社刊行予定)、怒濤の校正中。ぎりぎりのエッジを歩いています。果たして間に合うのか。どきどき。
3)週刊新潮『スカラムーシュ・ムーン』、好評連載中。
4)5月19日、東京フォーラムで中学受験生向けの講演会を行います。タイトルは「勉強する理由」。中学受験生なんて、私が子どもだった頃には、私の回りにはひとりもいなかったので、そんな人たちに偉そうな話をするのは、自分でもいかがなものかという思いもありますが。
5)一年前『このミス』十周年記念で刊行された『10分間ミステリー』第二弾に参戦します。タイトルは『虹色の飴』。初めてのグルメ・ショートショートです。前回は「『このミステリーがすごい!』大賞十周年記念企画」ということで、受賞作のタイトル縛りという試みで書いてみたら、真面目なミステリーファンから袋だたきにあいました。その時、日本の読者は生真面目だなあ、と感じ入りました。でも、そうしたゆとりのなさがジャンルの衰退につながっていたりして。
6)毎日新聞夕刊に掲載された「私だけのふるさと 作家たちの原風景」(岩波書店)という連載が書籍になり、40名の作家が参加しています。私も、「大学道場で剣道 体にたたき込む」という項で参加しました。よろしければご一読を。
7)5月は、個人的にちょっとしたビッグ・イベントがあるのですが、それについてはまた後日。
2013年4月1日 海堂尊