海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2011.12.14 2011:12:14:16:22:37

君、国を売りたもうことなかれ

 注目点はただひとつ。Aiを警察主導にしたら、死因に関する情報公開が阻害される。そしてそのことが捜査ミスや冤罪の温床になる。

 

 一方、医療現場でAiを主導すれば、その情報は必ず対象市民と市民社会に公開される。その時には、過ちを犯せば直ちに明らかになり、善後策を打て、そして市民社会は少しずつ、いい方向へと向かっていくことでしょう。

 

 政治家と官僚たちの見識が問われているのです。

 

 

 近況です。

 

1)『極北ラプソディ』が無事、刊行されました。表紙にドクターヘリが飛んでいます。北の大地で、速水と世良の因縁が北の大地でぶつかりあい、極北篇は終幕を迎えます。『極北クレイマー』の時には、物語が閉じていないという大ブーイングをくらいましたが、今回はきっちりと話を終えました。

 

2)今年の『このミステリーがすごい! 2012年版』では短編を掲載しました。加納警視正と玉村警部補の事件簿『エナメルの証言』は、本邦初(かどうかは定かではありませんが)の歯医者ミステリー。医師で医療ミステリーを書く作家はいるけれど、歯科医で歯科医ミステリーを書こうとする作家はあまりいないようなので、思わぬ盲点ですね。実はこれ、構想7年の年代ものだったりします。どうかお楽しみに。

 

3)これに伴い、初の短編集『玉村警部補の災難』を2月に宝島社さんから上梓します。『このミス』で4年にわたり連載した警察小説短編集です。いつもの通り、ゲラは相当真っ赤になりました。連載とはまったく別物のようになっておりますので、ご一読を。

 

4)秋、講演会のシーズンも間もなく終わります。

 福井大のAiセンター開所式は大変話題になりました。3TのMRIで小児の遺体の全例実施を行なう方向で検討されているらしい。これが実施されれば、世界最先端の素晴らしい研究になるでしょう。

 

 昭和女子大では女性教養講座というのを行いましたが、人見記念講堂で、何と聴衆二千人。二千人の女子大生を前に、軽いジョークにくすりともされずに真面目に喋ること90分。いやはや、大層ばてました。

 

 それから岡山県医師会に招かれた生涯教育講座の講演会では、やはり岡山でも医師会を中心にAi実施が進みそうです。やはり、良質な医療提供を考えているのは、医師会がメインのようで、役所や学会はダメな気がします。

 

 12月は、やはりいくつかの講演会があり、千葉、東京、東京、京都の四連発。来年は講演を減らします。(きっぱり)

 

5)海堂ラボは、年末に撮影です。ここで残念なニュースをひとつ。海堂ラボは2012年3月を以て終了いたします。理由はCS朝日ニュースターが身売りをして、スタッフが全員解雇されてしまうから。話を聞かされた8月に番組終了を決めました。週刊誌にも掲載されているので、そろそろいいかなあ、と。

 

 出演者に思う存分語ってもらうという、いい番組だったと自画自賛。けれどもちょうどいい頃合いのような気もします。視聴してくださった方々、ありがとうございました。残り3ヶ月、よろしくお願いします。

 

6)『このミス』の近況にも書きましたが、来年は宝島社のフラッグシップ、東城大学シリーズの最終巻を刊行予定です。ちなみに夏過ぎには、「週刊現代」で連載中の『スリジエセンター1991』でバブル三部作を閉じます。

 

7) かくの如く、海堂ワールドは来年以降、終幕へ向けて舵を切ることになります。思えば5年、何とか生き延びることができました。これも私を支えてくださった読者のみなさんのおかげです。そうしたファンの方たちのために、この世界を無事閉じていくことに集中させていただきますのでお楽しみに。

 

 そういえば5年前、こっちの世界に来た時は、医学界よりも風通しがいいなと思ったものでしたが、5年経って振り返ってみると、文壇や出版界は、病理学会や医学界と大して変わらないなと感じています。

 

 ま、今となっては、もうどうでもいいことなんですけど。

 

8)というわけで、今年のブログはこれでおしまいです。みなさん、よいお年を。

 

 

                                     2011.12.04  海堂尊

 

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