海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.12.14 2011:12:14:16:22:37

君、国を売りたもうことなかれ

 Aiに関しても同じことがいえます。警察庁を中心とした官僚集団は現在、死因究明制度を解剖立て直しをベースに検討しています。それは必要なことですから異論はありません。ですがこの時、議論をせずにAiについても枷をはめようとしています。Ai情報を捜査情報の枠に組み込み、情報公開を制限するという枷です。

 

 これでは現在の、司法解剖をベースにした死因究明制度の問題点を改善せず、むしろ悪化させてしまう。官僚独裁主義の最大の問題点は、こうした危惧に耳を傾けようとしない点にある。警察はAiについて認識しています。そしてその運用上の問題点も把握している。そして、そのことに何一つメンションせず、議論なしで物事を決めようとしている。

 

 これが官僚独裁主義の典型的な姿です。そしてそれを御用学者たちが、自分たちのささやかな利権を守るために後押ししている。それが有識者会議などで提言をまとめている法医学者たちです。その証拠に、現在の大学の法医学教室を法医学研究所と看板を掛け替えて、そこに予算をつけようとしています。そして、現在の司法解剖制度や死因究明制度の不透明さは、まったく改革されない。

 

 こうした官僚独裁主義の人たち、そしてそれを取り巻いている人々に、ひと言告げたい。

 

 君、国を売りたもうことなかれ、と。

 

 

 でも、少しずつ変化している部分もあります。事件報道で「司法解剖の結果でも死因は判明しなかった」という報道がなされるようになってきたからです。

 

 これを期に、法医学者は焼け太り予算をつけてもらう前に、現在の司法解剖による死因判明率を公表すべきでしょう。そうでなければ、国民の税金を投入する根拠がないままに予算執行されてしまうことになるからです。

 

 さらに、たとえば米国で行われているように、法医学を病理学のサブスペシャリティにするという根本的な改善策もあります。

 

 米国で医師になるためには法医学は必修ではなくなるというのです。また、日本でも国際基準で医学教育認証制度を発足させるのですが、その認証制度では法医学は必修ではないことになっているようです。

 

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