海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.11.05 2011:11:05:07:45:05

Aiが救った会社と運転手の名誉

 Aiは、すでに日本社会に制度としてしっかり根付いているようです。
 先日のとあるニュースから。

 

運転手、事故直前に意識失う? 愛知のバス転落 (2011/10/7 日経新聞より引用)
 愛知県瀬戸市で7日、岐阜県の小学生らが乗ったバス転落事故で、死亡した運転手の死因は内因性のくも膜下出血であることが同日、愛知県警交通指導課などの調べで分かった。コンピューター断層撮影装置(CT)などによる検視で判明。同課は運転手が事故直前に発病して意識を失った可能性があるとみて詳しく調べる。
 バスを運行する北恵那交通(岐阜県中津川市)によると、荻野さんは毎年1回の健康診断などでこれまでに特に異常は見つかっておらず、同日朝の点呼でも変わった様子はなかった。国土交通省中部運輸局は同日、同社の調査に入った。
 県警の実況見分の結果、現場は9.8%の勾配がある下り坂で路上にブレーキをかけた跡はなかった。バスは最初に進行方向左側のガードレールに接触した後、対向車線側のガードレールを突き破って転落するまで、ほぼ真っすぐに進んでいたことも分かった。同課は荻野さんが最初のガードレール接触前に意識を失うなどし、ハンドルを切ったり、ブレーキを踏んだりする操作ができなかった可能性が高いとみている。

 

 7日の午前中の事故で、8日の朝刊にこの記事が掲載されました。他紙では、死因を判明させた検査についての言及はありませんでしたが、日経新聞だけきちんと記載していました。この内因死を確定したのはAiだったわけです。(前回も申し上げた通り、警察はAiという用語をわざと使わないようにしています。たぶん一部の法医学者の強弁に、顔を立てているのでしょうけど、不自然な話です)

 

 さてここで、Aiがあったことによる社会的なプラス面を考えてみましょう。なによりも運転手さんとそのご遺族、そしてバス会社の名誉が守られたというのが、一番でしょう。この時期に死因が判明し、社会に公表されたことで、人為的ミスではなかったことが、社会全体の共通認識になりました。そうしないと、ひょっとしたら運転ミスなのではないか、と思われてしまいます。そしてそれに対して死者は何も申し開きができません。
 
 もしもAiが導入されておらず、法医学者が主張する「とにかく解剖しなくてはダメだ」という世界だったら、どうなっていたでしょうか。
 これは木曜日の事故ですから、司法捜査で解剖を決めた場合、週明けの解剖になる可能性が高い。事件性の有無を確認するためには、司法解剖になるでしょうから、裁判所から解剖命令をもらわなくてはなりません。するとこの時は三連休ですから、司法解剖は連休明けの火曜日になる。こんな案件では実施時期はこうなることは間違いない。そうなると、その結果が報道されるのは水曜日の朝刊になる。何と、一週間も遅れてしまうわけです。


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