海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.11.05 2011:11:05:07:45:05

Aiが救った会社と運転手の名誉

 実際、法医学者のとんちんかんなAi理解がムダな設備を警察にもたらしました。それは簡易エコーの導入です。確かに私もAiの概念提唱時、エコーもAiに含めていましたし、著作にも頁を割いています。ただしそれは3Dエコーが対象でした。簡易型リニアエコーは、ほとんど役に立たない代物です。でも一部法医学者が、Aiとしてそうした主張をし、それはそれで悪いことではなかったのですが、警察庁が何の準備もせずいきなり各警察署に携帯型のリニアエコーを配備してしまったのです。


 そんな行動が医療従事者の失笑を買ったことは言うまでもありません。ただし笑ってもいられません。見方を変えれば、限りある血税がムダに使われたわけで、それを防げば、もっと有効な税金の使い道があったわけです。つまり、このとんでもない予算執行の被害者は国民全体というわけです。


 だから警察がこっそり、Aiを自分たちの領域に組み込もうとする動きには、医療関係者として、そしてAiの概念提唱者として、目を光らせて、忠告し続けていかなければならないわけです。

 

 一方、2011/10のCBニュース『二次救急外来、実施の86%で赤字』によれば、2011年1月2月、日本病院会(堺常雄会長)により『救急医療に関するアンケート調査』が2411病院に実施され、595病院の回答(回収率24.3%)を得たそうです。そのうち500病院が二次救急受け入れ病院だったそうで、その86%が赤字というのですから、ひどい話です。


 その中に「不慮の死亡時における死亡時画像診断(Ai)の実施率は48.8%と半数を占めることがわかった。実施病院の37.7%では病院側が費用を全額負担していた」と掲載されていました。


 アンケートに答えた半分の病院でAiが普遍的に行われ、しかも、その費用負担の仕組みがきちんと作られていないことから、経営難に陥らせられている。これって、国がきちんと支払いを担保しなければおかしな話でしょう。


 医療現場ではAiがフリーライド・システムにされてしまっています。検査をしても費用を払ってもらえない。そんな検査を医療現場がやる義理は本当はありません。でも必要だから、やる。そしてそのツケは医療現場が払わされる。


 こんな状況を座視しているのが、現在の政権であり、医療行政です。


 その状況は、私がAiを提唱し始めた2000年から変わりません。私はこの問題を何とかしたいから主張を続けてきました。けれども厚生労働省はこの問題を無視し続け、警察庁は自分たちに都合良く予算を低額に抑えることばかり考えています。本当に困ったものです。

 

 さて、もうひとつ、重大な危惧が。


 警察庁は、新しい死因究明制度として法医解剖なる珍妙な仕組みを作るべく、新しい法案作りに勤しんでいます。国会議員に趣旨説明をしているようですが、その時持参しているのが『死因究明制度に関するワーキングチーム』平成23年8月4日、官邸三階南会議室、なる資料です。


 議長は内閣官房内閣参事官(政務)、副議長は内閣官房副長官(事務)、参加者には、警察庁刑事局長、法務省刑事局長、文部科学省高等教育局長、厚生労働省医政局長、海上保安庁次長、などで構成されています。


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