2011年9月23日、日本医師会会館で「平成23年度Ai学術シンポジウム・Aiの現状と未来」が開催され、日本医師会の原中会長がご多忙の中出席され、冒頭にご挨拶をされました。
このシンポジウムはひとつの集大成であり、ようやくここまできたか、と感無量です。
これは現場でAiを実施している医療施設の人たちのシンポジウムでした。第二部、Ai実施施設からの報告という部分からも明瞭です。発表者のうち札幌医科大、東北大、群馬大、福井大、佐賀大、千葉大、Ai情報センターでは、実際の施設に「Ai」という名称を冠し、「Aiセンター」と公式名称として名乗っています。
つまり今やAi(オートプシー・イメージング)は、正式用語として社会認知され、大学の組織に冠されている学術用語なのです。
公開討論部分では、会場から運用について具体的な質問が相次ぎ、その応答に終始しました。そして誰一人としてAiの実施については、異論を唱えなかったのです。つまりAiは実施すべき検査である、ということがほぼ医療界の共通認識となったのです。
画期的だったのは厚生労働省政務官の代理として出席された厚生労働省医療安全推進室の宮本室長が最前列に陣取り、シンポジウムを最初から最後まで聞いておられたことです。当日は、病理学会主催の,モデル事業関連の『病理学会百周年記念市民シンポジウム』も開催されていたのですが、五年間で百例しか解析できなかったモデル事業より、現在少なく見積もって年間一万例以上実施されているAi(塩谷先生談)の方が公益性が高いと判断されたのでしょう。
その判断はまことに正しい。
モデル事業は大失敗したモデルです。全国展開など、とうていできない仕組みだからです。もし全国展開できるのであれば、各地に自発的にシステムが立ち上がっているでしょう。
そう、Aiセンターのように。
この春、モデル事業の後継組織である「医療安全調査機構」への税金投入の減額が決定されましたが、これに対しモデル事業に関係した一部委員から猛烈な抗議の声があがり、うやむやな決着になっています。同時に関連学会から上納金を集め、存続を模索しているという話ですが、ある学会上層部の方が「うちのような弱小学会まで資金援助させるなんて、おかしいですよ。公開されているお金の使い方を見てみると人件費がほとんど大部分だし」というと、側にいた先生が、「あちこちに事務所を設置し、天下り先にしようと考えているのかもしれませんね」と応じていました。
復興増税などと、とんでもない方針を打ち出した民主党ですが、財務省のパペットマペッットと化した野田政権が、公務員住宅建設を復活させ、世間から非難囂々をくらって延期したように、モデル事業も官僚の後押しがあるのか、こっそり復活させようとしています。
でも、存続を訴えているのは、モデル事業に関わった人たちだけ。医療事故被害者の方々も、存続を訴えるのはモデル事業の関係者になっている人たちだけです。今やひとつの権益団体と堕したモデル事業存続を図ろうとしている組織が、後継の「医療安全調査機構」です。
この機構、まったくムダです。
なぜなら、法律による裏付けのない調査機構だから。そしてバカ正直にこれに応じれば、医療がひとり悪者にされてしまいかねません。
警察庁が新たに「法医解剖」だの、「法医学研究所」だのを構築しようとしてばたばたしていますが、それとみごとにバッティングしています。まあ、どちらもダメダメの企画であることは一緒なんですけど、まさに類は友を呼ぶ、状態なんでしょうね。