海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.11.05 2011:11:05:07:45:05

Aiが救った会社と運転手の名誉

 その参考資料の中には、Aiどころか、死後画像の文字もありません。では、解剖に特化した法案作りなのかといえば、さにあらず。


 今後の検討事項の②に、「法医学的検査の導入、警察が死体を取り扱う際に、約毒物の影響や死体内部の異常を把握できるようにするため、遺族の承諾がなくても実施できることを検討」とありますが、この部分が役人の説明によれば、Aiに相当するそうなのです。


 Aiという用語が嫌いでも、死後画像と書けばいいのに、どうして忌み言葉みたいに隠すのでしょう。


 項目立てを見ると、Aiに対する隠蔽が際立ちます。


① 法医解剖制度(仮称)の創設及び法医学研究所(仮称)の設置 これは、前回も述べた通り、屋上階を重ねるが如き、変な解剖の新導入で現場はさらに細分化され、混乱させられるし法医学研究所は、現在の大学法医学教室の看板を掛け替えて、そこにだけ金を入れようという、法医学教室さえよければそれでいいという、社会全体からみたら、実にあさましい提言です。
② 法医学的検査の導入 薬毒物検査とAiを指していると思われるのに、なぜか、言い方を不明瞭にして、死後画像という言葉を隠しています。
③ 解剖医体制の強化 ④ 薬毒物検査の拡充 ⑤検案の高度化 ⑥検視、死体検分の高度化 ⑦身元確認の高度化 ⑧死体関連初動捜査力の向上

 

 並べてみると、薬毒物検査はわざわざ別項目立てにしているので、Aiのみが項目として立てられていない、不自然さが際立ちます。


 このワーキンググループが、Aiに言及しないのであれば、それはそれでいいでしょう。でも、もし政治家の方たちに説明に上がった通り、Aiについて検討するのであれば、項目立てとしてきちんとしなくてはならないし、その時は、有識者として法学者以外の専門家、たとえば日本医師会の担当理事や放射線科医の意見を聞かなければ、とんでもないことになってしまいます。ムダな投資をして、機能を活用できず、誤診や冤罪の温床になってしまうからです。


 こうした危惧を事前に指摘されながら、仕組み作りを強行したらその時は、警察が市民の安全以外の何かを大切に思ってしまっているという、大変危険な兆候を示していることになる、と言えるでしょう。

 

 画像診断の専門家である放射線科医の集団である放射線学会が、今、Aiの読影のための研修会を構築しようと努力しています。専門家でさえ、研鑽を積まなければ読影できないような難しいAiの読影を、画像診断の専門家ではない法医学者に任せるようなシステムを作ったら、その時は間違いなく、冤罪や犯罪の見逃しが繰り返されるでしょう。そうした危惧を事前に指摘されながら強行した場合、システム構築した責任者は、後に発生する冤罪の全責任を負うことになります。


 担当官の名前はわかっています。官僚の無名性に隠れて逃れることは、Aiの社会導入に関しては許されません。それこそ、Aiの公平性、透明性、中立性、迅速性を示すことにもなるわけですから。

 

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