海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2011.03.15 2011:03:15:15:05:09

東北関東大震災の所感と、癒着という表現についての考察

 人々のお手本になるような人は、疑われるようなことをやってはならない、と中学受験の参考書に書いてありました。さて、そんなスリリングな内容満載の『ゴーゴーAi アカデミズム闘争4000日』、無事発刊しました。

 

さて、衝撃のニュースがふたつ。担当編集さんからのお知らせです。

 

「刊行記念サイン会、講演会にかこつけ厚生労働省記者会の皆様に各社一冊ずつ『ゴーゴーAi アカデミズム闘争4000日』を寄贈することにしました。彼らが真実をしれば、大本営発表も少しは変わるのではないか、という期待をこめて。ちなみに厚生労働省記者会のメンバーは以下の通りです。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞、東京新聞、産経新聞、北海道新聞、西日本新聞、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、京都新聞、山陽新聞、共同通信、時事通信、NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京。」

 

 実に錚々たるメディアの集まりですね。医学ジャーナリズムがどう評価するか、あるいは完全に黙殺するか。結果をお楽しみに。

 

このような状況ですので、17日に予定していた『ゴーゴーAi』発売記念サイン会は、版元さんと書店さんと相談の上、中止とさせていただきました。楽しみにしていただいた方々にはお詫びいたしますが、どうかご理解下さい(今日の読売新聞広告に告知が掲載されておりますが、変更が間に合わなかったとのことです)。

 

また、まだ版元さんと相談はしておりませんが、この本の印税は全額寄付させていただくことにします。どこにどのように寄付するかはこれから検討させていただきます。

 

 さらに告知。『極北クレイマー』、文庫好評発売中。解説は夕張希望の杜の村上智彦理事長にお願いしています。名文ですので、解説だけでも是非ご一読を。

 

吉川英治文学新人賞、残念ながら落選です。私は、文学賞は候補にしていただくことが目標ですからありがたいことだと満足しています。なぜならそれが版元さんの評価だからです。そして候補作はどれも力作揃いに決まってますからあとは時の運。今回はオープンな待ち会はしませんでした。最近、そういうのをショーアップしているTV番組をいくつか見て、なんか、そういうのはもういいかなあ、なんて感じたもので。だって、読者不在なんだもん。ただし、編集さん方の温かいお気持ちは、ありがたく拝受しております。

 

一方で専門家の評価、ということについて考えることがあります。既刊『モルフェウスの領域』は、コールドスリープというSF素材を用いて、社会対応に特化して書いたSF新領域と自負しているのですが(実際、あるインタビューして下さった書評家の方もそう認めていて、SF畑の人の意見を聞いてみたい、と言っていた)、残念ながらSF領域の人たちの書評は上がりませんでした。実は先日、とある著名なSF評論家と話したところ、どうも反応が芳しくなかった。技術論がひっかかっているようでした。ははあ、こうして新しい領域について果敢に言及せず、お友達の輪の中でとどまるからジャンルが衰退していくのだな、と感じた次第です。

 

4月中旬、『ナニワ・モンスター』刊行です。もうじき、ゲラが手を離れます。あと少し。これは問題作です。って、出す本出す本、全部問題作の問題作家ってどうなのか(笑)

 

もうひとつ講演会。4月9日、板橋区医師会主宰の講演会で講演します。板橋区立文化会館大ホール。板橋区医師会の主宰する「第四回脳卒中区民公開講座」の中で、なぜかAiについて話します。相当大きな会場ですよ、1000人は入りますから、と依頼された先生から脅されて、少々ビビリ中。

 

あと、これは初めての告知。たぶん秋、宝島社さんから初めての短編集を出版予定です。どうかお楽しみに。

 

最後になりますが、こうした非常事態なので、書籍購入を控えて寄付に回した方がいいのではないか、という意見もあるようです。ですが私はそうは思いません。今、必要なのは、各自が自分なりにできることをきちんとすることです。被災地以外では、通常の営みを通常のようにする、そして、意味のない浪費を倹約するということです。たとえば書籍の買い控えなどしたら、良質な版元が連鎖倒産してしまうかもしれません。果たして被災者の方たちがそんなことを望んでいるでしょうか。あるいは被災地が悲惨な状況だからこそ、物語を必要としている人がいるかもしれません。現実は私にはわかりません。ですがそうした方たちのためにも良質なものを書き、供給することが、今、私ができる精一杯なのだと思っています。

 

                                         2011.3.14   海堂尊

 

 

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