海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.03.15 2011:03:15:15:05:09

東北関東大震災の所感と、癒着という表現についての考察

 また、激甚災害の際の死因究明制度は通常と異なり、死因究明は二の次になり、個体識別情報の取得に重きがおかれます。この時には主体になるのは歯科医の先生方であり、またAi学会に関心を持つ医師の方々になると思われます。「Aiだけではダメで必ず解剖しなくてはならない」という解剖至上主義者の方たち(特に病理学会上層部と法医学会上層部のごく一部、そして厚生労働省医療安全推進室の方たち)の論理は、社会インフラの整備にとってはマイナスであることは明らかです。だってこの場合はAiと検案のみでほとんどの症例が解剖されないことは明白なのですから。つまりAi単独施行というケースをベースにしなくては、社会に有益なAiの導入は不可能なのです。

 

3月14日に予定されていた厚生労働省のAi検討会の最終回は中止になりました。まあ、当然です。ただし事態が一段落したら、この検討会は次年度も継続して行われるべきでしょう。厚生労働省が以前からAiに積極的に対応してくれていれば、今回の激甚災害にあたってもかなりのインフラが整えられていたことは間違いありません。もしも地域単位にAiセンターが設置されていれば、そこに死体検案支援対策本部を設置できます。そこには、死体専用機も設置可能です。空理空論の積み上げではなく、現実に即した必要性の高いものを構築するための実質的な議論を推進していく必要があります。それには、肩書きだけで委員を選ぶような、これまでの官僚主催の検討会の委員選びから変革していく必要があります。現場で事情をよく知っている先生方を選抜する必要があるでしょう。

 

繰り返します。個体識別に関しては、解剖よりAiの方が有益な情報を社会に提供できます。医療行政に係わるみなさんは、Aiの社会導入を積極的に推進するべく、ご検討お願いします。

 

震災雑感の最後に、原子炉溶融について一言。後にこの問題を声高に批判する人たちが必ず出てくることでしょう。しかし今回の件は、事前想定がほぼ不可能な事態でした。過去の対応のまずさを責めてもまったく意味がありません。現場対応が後手後手などという批判もありましたが、これほど現場の方たちの意欲を削ぐ発言はありません。少なくとも報道を見る限り、現場の方たちは最善をつくして対応されています。「やらないヤツが批判する」という日本社会の悪しき体質をそろそろここらで変える必要があるのでは、と思います。なぜならそうしている限り、社会に愛着を持つ、素晴らしい人材が育たなくなってしまうと思われるからです。「現場にいない、バックヤードが口先批判して、現場最前線の勇者を根絶やしにする」。そうした時に泣かされるのは市民なのですから。忘れてはならないのは、私たち日本国民は原子力発電がもたらした豊かな電力供給を享受してきた、ということです。

 

以上、東北関東大震災における、雑感でした。個人的には部屋の中がとてもミゼラブルなことになっていて、うんざりしています。これは単なる泣き言です。

 

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