厚生労働省が公募した、「診療行為に関連した死亡の調査分析における解剖を補助する死因究明手法の検証に関する研究」の主任研究官に東大病理学教室の深山教授が応募しました。これは、エーアイの先行研究へのリスペクトを欠き、アカデミズムの世界ではあってはならない行為です。
私がいくら力説しても、事態は変わらないかもしれない。でも、私はあえてここでこうしたことが行われたということは明らかにしておきたいと思います。それはなぜか。私はこの話を日経メディカルという医学専門ブログで書きました。ところが医学界の反応は鈍かった。そこで、一般社会ではこういう行為はどう判断されるのだろう、と信を問おうと考えたのです。それは、たとえここで私の主張が看過されたとしても、いつか時を経て、後世の人間が裁いてくれる時が必ずくると信じているからです。
中立的第三者機関設置を含めた「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」が病理学会理事たちを交えて、過去二年展開したことに私はこれまでも言及してきました。そして、そのシステムが「解剖」をベースに置いている限り機能しないだろう、と予言してきました。なぜなら現在の解剖率は2パーセント台、そしてその70パーセントを占める病理解剖の費用拠出がなされていない、という社会的現状があるからです。そして、こうした問題にもエーアイを導入すべきだという意見を私は主張し続けてきましたが、聞き入れてはもらえませんでした。
一方、病理学会理事長、長村教授とやはり病理学会理事で東大病理学教室の深山教授のおふたりが、このモデル事業に関与してきたことは周知の事実です。
昨年四月、病理学会が「医療事故調査委員会」設置に向けてのパブリックコメントを作成した際、このふたりが中心になっていたと聞いています。そのパブリックコメントの中で、病理学会は「診療関連死の調査・評価に当たっては、オートプシーイメージング等は、解剖と併用する場合以外には用いるべきではない」と主張しています。
ところが昨年十月、厚生労働省は世の中の流れ、及び自分たちが行ってきた「モデル事業」がうまくまわらなくなっているという声にようやく気づいたのか、公募研究を募集します。この公募研究は、厚生労働省のホームページ上に掲載されました。それが、「診療行為に関連した死亡の調査分析における解剖を補助する死因究明手法の検証に関する研究」(以下「公募研究」といいます。)だったのです。
そして、公募研究に応募したのは、前述の東大病理学教室、深山教授ひとりだったというのです。
厚生労働省の官僚は、この公募研究は「エーアイ」の研究を指す、と考えて立ち上げたそうです。私があれほど厚生労働省に必要性を訴えていた時には見向きもしなかったのに、ひそかに研究の枠組みを採用していたとすれば、厚生労働省も大した慧眼です。しかも担当部署は、かつて私の勉強会をドタキャンした厚生労働省の医療安全室だというではないですか。
2008.04.21
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