海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2008.04.21 2008:04:21:16:54:38

深山正久教授(東大病理学教室)が「オートプシーイメージングに関してつけられた公募研究」に応募したことへの批判

 東大病理学教室教授の深山先生は、画像診断のスペシャリストではありません。ヘタをすると、一般の臨床医よりも臨床画像診断能は低いかもしれません。(これは誹謗中傷ではなく、専門外なのだから、仕方のないことです)。画像診断の研究なのだから、主任研究官には画像診断の専門家がなるべきなのは当然です。
 更に、こうした研究設計にはふたつの問題があります。それは、東大だから潤沢に資金を運用できる、ということです。ですがこれはモデル事業、つまり日本全国で普遍的に施行するものごとの礎になる、という前提の研究です。果たして他施設で、モバイルCTをベースにこうした検査が普遍的にできるというのでしょうか。さらに、モバイルCTを用いた研究はすでに千葉大法医学教室が先行して行っている。その結果、時代は通常診断機器を用いてのエーアイという流れになっている。それなのに東大病院は、エーアイを通常機器で撮像するというコンセンサスすら得られない。つまり東大病院はいわばエーアイの後進施設なのです。それもこれまでエーアイに十分な理解を示してこなかった東大病理学教室が、通常の診断機器の使用を持ちかけて合意を得られなかったのは自業自得なのです。
 そんな施設に属し、しかも画像診断分野の専門家ではない病理医が、たとえ学術世界の頂点である東大教授だからといって、オートプシーイメージングに関してつけられた公募研究の主任研究官を務めようとしている。このような状態は不合理というほかありません。
 さらに言えば東大病院は、エーアイによる死亡時医学検索に対してきわめて意識レベルが低い、ということも露呈したわけです。なぜって? 東大病院は、今回、深山教授がエーアイ実施協力を要請したら、「生きている人を診察する機械で、死体を診断するなんて問題だ」という意見で反対され、このような研究の枠組みになったのだそうです。私の物語を読んでこられた読者は、こうした反応が実際にあるということを信じられない、と思われるでしょうが、先進性を鳴らしている天下の東大病院が、実はエーアイに対してはこのような意識にあるのです。
 まさしく、事実は小説よりも奇なり、です。

 厚生労働省は、エーアイの内実をよく知っています。それはこのブログでも書いた通り、私をAiの勉強会に呼ぼうとして、もうすでによく知っているから今さら呼ぶ必要もない、とドタキャンされた事実から明らかです。しかも、千葉大でエーアイセンターが実際に運用開始されていることも認知している。
 なのに、厚生労働省がエーアイに先進的な千葉大や筑波メディカルセンターの研究者に声をかけなかったのは、いったいどういう了見なのでしょう。
 こういう話をするとひょっとしたら、厚生労働省はこの研究自体を中止するかもしれません。しかし、国会で、エーアイに対し公募研究をおこなったといっているのですから、中止にしたらいよいよ厚生労働省がエーアイに対し、その場しのぎだったということを明らかにしかねない事態になってしまいます。

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