そういえば、私のモットーは「物議を醸す」だったのをふと思い出しました。
これも多くの議員の方は、死因究明の現場の実情をご存じなく、講演で聴いて問題を把握した結果、素直に、そして鋭く問題点を衝いた結果だと思います。こうしたことがきちんと積み上げられていくのであれば、日本の政治も捨てたものではないとは思うのですが。
小児死亡症例全例にAi実施を、という提言は、関連省庁がその気になれば明日からでも実施可能な、社会的に意義の高いものです。逆にこの程度のことも実現できないようでは、霞が関は市民社会のために活動しているのではないのではないか、という疑念さえ浮かんできます。
今、内閣府が主導し、死因究明制度に関する検討会が月一回のペースで実施されています。その検討会でもおそらく日本医師会代表の委員から、小児死亡症例全例にAiをという提言がなされるのではないかと思われます。果たしてその提案が霞が関の官僚の人たちにどのように受け止められるのか興味津々です。Aiに対して反感を持っている法医学者の方たちが、もし市民社会のために検討会に参加しているのであれば、この提言に賛成し実施に協力するはずです。なぜなら以前も述べた通り、虐待の診断はAiがもっとも有効だからです。虐待児の診断基準のひとつに、古く多発する骨折痕という所見があります。これは解剖では発見できません。たとえば腕の骨折痕も、昔のものなら直ってしまっているので、皮膚に異常所見はみられません。そうなると傷のない腕を解剖はしません。だから解剖が虐待所見を見落とすのは必然なのです。これは解剖という検査の致命的な欠点です。それなら法医学者がAiをやればいい、というかもしれませんが、こうした骨折を見つけるのは、専門家である放射線科医でも難しい。なので法医学者がAiを実施したら、やはり虐待所見を見逃してしまう可能性がきわめて高いのです。