私の主張は終始一貫しています。Aiを専門家に任せるというシステム作りに法医学者が積極的に賛同してくれるのなら、解剖制度をきちんと構築したいという法医学者の主張は応援したい。でも法医学者がAiも自分たちがやるだの、Aiは情報が不確定だから解剖を必ずしなければならない、などと解剖至上主義を貫くのであれば、今の社会情勢の下では市民社会の害をなす考えになるので、徹底抗戦するしかなくなってしまいます。
いずれにしても内閣府での死因究明制度推進会議の議論の行方、そしてそれに対する霞が関の対応姿勢については注目し続けていこうと思います。
そんな最中、4月14日に「第110回日本内科学会総会パネルディスカッションー死因究明のさらなる向上をめざして」が開催されたようです。出席しようかと思ったのですが、急な所用のため断念しました。伝え聞くところではAiの重要性はそこそこ説明されたようですので、まずはひと安心というところでしょうか。
ところがなんと外科学会でも同日、同じような企画がされていたようです。「安心かつ確実な医療事故調査制度と無過失補償制度の創設にむけて」という特別企画です。
つくづく学会上層部というのは視野狭窄なのだなあ、と呆れ果ててしまいます。科学者であり医学者でもある優秀なはずの外科医を始めとする臨床医が、死因究明制度の根幹が整備されていない状態にあるのに、その上に立てられる医療事故に対する死因究明制度だけ先に作ってしまおうとしていること、そうしたことができると考えているということが、私には不思議でなりません。この場合、まず死因究明制度の土台を作って、次のステップで医療関連死システムで特別部分を作るというのが筋だというのは、素人でもわかりそうなものなのですが。
日本医師会の意見としては、医師会で検討している医療事故調査に関する検討委員会では、警察の介入防止を、組織創設の第一の目的と考える、という意見です。その考えがいいか悪いかは別として、それが本当なら少なくとも医療安全調査機構は支持しないとおかしなことになります。日本医療安全調査機構の大阪事務所では、モデル事業解剖を実施する際、警察の判断をあおいでからモデル事業を適用していたということを知りながら、それを黙認し続けてきたからです。これでは医師会の主張に表面上従うように見せながら、裏でこっそり裏切っているのと同じです。何と不誠実な対応でしょう。その事実を知れば、モデル事業に医師会が寄付するのは、何とも間抜けで、バカにされるような判断になるでしょう。