海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2012.11.26 2012:11:26:17:16:27

医療安全調査機構のこと、総選挙のこと、そして自民党公約にAiが導入されていることとか。

「変死体 画像診断広がる」というタイトルで、死亡時画像診断にAiという注釈がきちんとされて紹介されていました。内容を抜粋すると「全国の警察でAiの導入が進み、2011年度に警察庁に報告があった実施件数が5065件と、四年間で約10倍に急増した」「2011年度に警察が扱った遺体は17万3千体で、解剖されたのは約一割の1万9千体」「06年からAiを導入している千葉大法医学教室ではこれまで約1500体を診断」「自治体予算で実施する警察本部もあり、実際の実施件数は同庁の集計数以上とみられる」とあります。

 

 千葉大法医学教室の責任者はAiという用語を毛嫌いしていて、これまで千葉大法医の教授の記事では使用してこなかったのですが、どうやら社会の認識はやはりAiだったようです。ま、当然ですね。

 

 警察主体のAiは、「Aiを行う基準は明確ではなく、司法解剖前に実施したり、検視で犯罪性が判然としない時に行われることが多い」と記事にもあるように制度設計がきちんとされていない点が問題です。

 

 記事にはありませんが、法医関連のAiは多くの場合、「撮影すれども、診断レポートなし」「診断すれども遺族と市民社会に情報公開なし」という、危険な状態になっています。これは将来、冤罪を引き起こす温床になるでしょう。

 

 

 これまで冤罪の多くは、司法解剖鑑定のいい加減さ、無責任さが大きな要因を成してきました。でも法医学者は鑑定を間違えても謝罪しません。そして司法解剖は監査ができない状態にあるため、誤診をしても、裁判の場にならなければわからない状態にあるのです。つまり鑑定内容に関してある意味、法医学者は無責任な立場でいられるのです。

 

 Ai診断は、専門家の画像診断医でさえ、難しい部分があって躊躇しています。そのためAi研修会が実施されているくらいです。それなのに画像診断の専門家でない法医学者が診断している、非常に危うい仕組みが上記の記事の内実なのです。

 

 

 記事はこう締めくくっています。「同庁(警察庁)はAiについて、『解剖を行うかどうかの前段階で的確な判断ができる。さらに積極的な実施を求める』としている」。このコメントは正しい。ただ、的確な判断をするためには、法医学者にコンサルトしたのではダメで、放射線科医にコンサルトしなければならない、という点をご存じかどうか、そしてそれに伴った仕組みを作れるかどうかに係っているといえましょう。

 

 

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