秋の講演は九州シリーズで開幕しました。9月29日は宮崎日日新聞主催で宮崎グレース講座。10月6日は佐賀大学医学部の学園祭。10月12日は佐世保で医療マネジメント学会の特別講演。本当なら二週間近く、九州に滞在しようかとも思ったのですが、10月7日、周防正行と公開対談をするために一瞬、東京に舞い戻りました。映画「終の信託」の公開試写会の後のトークショーのためです。
一見とりとめのない漫遊ですが実はAi、そして医療と司法という軸で見ると、太い縦糸があった気がします。
宮崎グレース講座は、およそ七百名の女性オンリーの講演会でした。主な話は宮崎大がドクターヘリ導入を、救命救急センターがない状態から一気に一年で達成したということを主軸に話しました。奇しくも映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』で救急医の速水役をやった堺雅人さんが宮崎出身だったこともあり、大変話しやすかったです。
Aiに関する私のミッションは終了し、次の世代への応援団に回ったということをあちこちで述べていて、その証拠にこの講演も穏やかに進行しました。ところが堺雅人さんのことを知っているかという問いには会場のほぼ全員の女性が手を挙げたのに、Aiという言葉を聞いたことがあるかという問いに手を挙げてくれた人はなんとゼロ。そう言えば宮崎大はAiセンターを導入するすると言いながらちっともやらないなあ、という古傷を思い出し一気にヒートアップ。残り三十分が、怒濤のAi談義になってしまいました。
だって七百人もいるのにAiを知っている人がゼロなんて......。いや、これが社会の実態なのだ、と気を取り直し初心に返ってのラスト三十分でした。
ところが講演後に会場で行われたミニサイン会で、サインを求めて本を手にした淑女たちは次々に「実は私、Aiのことは知っていたんですけど、手を挙げにくくて」と言うのです。
結局、サイン会に並んだ百人近い、ほとんどすべての人がAiについて知っていました。
あのですねえ......。
まあ、実情を知って、ほっとしたのでいいんですけど。