海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2012.09.24 2012:09:24:12:12:26

自分たちの権益追求ばかりでは、法医学会の提言は市民の賛同を得られない。

 死因究明2法案が国会を通ったのに続いて、法医学会から提言が出されました。

 

 予想通り、「法医学会というのは自分たちの権益しか考えておらず、市民の公益というものへの意識が薄い人たちなのだな」と一読してわかってしまう、底の浅いものでした。

 

 いくら言っても「わからない人にはわからない」ので、仕方ないと思います。だからこの文章は、法医の人たちに改心してもらいたくて書いているのではありません。

 

 市民の人たちに「法医学会の上層部が、市民のためと言って提案していることは、自分たちの権益拡大をめざしているだけなんですよ」と理解してもらうために書いているのです。

 

 法医学会の提言が自分たちのことしか考えていない、ということが丸わかりの文章を転載しましょう。

 

 

各法医学教室は,大学医学部に所属する一講座に過ぎないゆえの構造的な問題を抱えており,献身的努力のみでようやく維持されているといった現在の状態のままでは,新法解剖を含めこれ以上の解剖及び附随する検査の増加に十分対応していくことが困難となることが予想される.それどころか,現状のまま推移し,解剖及び諸検査実施に係る人員・設備等を整備するための政府の積極的な施策がない場合には,近い将来,各法医学教室において現在行われている法医解剖でさえ,十分に実施できない状態に陥る可能性がある.私たちは,平成21年に「日本型の死因究明制度の構築を目指して:死因究明医療センター構想」と題する提言を公表した.この提言の中で,大学法医学教室とは別に,死因究明を担う機関の必要性を示した「死因究明医療センター構想」のように,新法の施行にあたっては,現状を改善する新たな積極的な方策が必要不可欠である

 

 そして彼らは、Aiを自分たちの領域に留めたくて仕方がないことまで晒してしまっています。

新法においては,画像検査や簡易検査等によって死因を判断することが規定されている.これらの検査は比較的簡便・迅速に結果を得られるといったメリットがあるが,用いる試料が適切でない場合には正しい結果が得られないことがあるなど,死因判断の手段としての限界がある.そうした検査の適応と限界について適切な知識を有する者が実施しなければ,判断を誤り,犯罪死を見逃すなどの有害な結果をもたらしうる.従って,簡易検査等の適切な実施方法については,予め指針を作成する必要がある.

 

 

 指針に書いてある言葉は読みにくいので、小学生にもわかる書き方をして、市民の理解を深めようと思います。

 

「僕たち法医学者は大学では権限がないから、とっても大変なの。でも、新しい法律ができるみたいだから、僕たちに優先的に縄張りや権限やお金をくれるような仕組みを作ってほしいんだ。そうしないと僕たち、どうなっちゃうかわからないんだもん。あと新しい画像検査とかも、僕たちの顔を立てて、僕たちの利権になるような仕組みにしないと承知しないぞ」

 

 まあ、こういったことが上品に書かれているわけです。この本心を読んでから指針を再読してもらえば、指針の言葉は理解しやすくなるでしょう。実際、提言の中身は「雇用の確保」など、法医学会の権益追求が大半を占めていますので、私の指摘は理解していただけると思います。

 

 

続きを読む 123456