海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.12.10 2010:12:10:20:25:30

東と西のAiセンターは、同じ法医学教室でも全然違う。

以前も書いた通り、モデル事業の人たちは、「Aiはやるけれど評価するのは解剖をやった症例だけ」というスタンスを変えていないので、「医療安全評価機構」にカネが流れることになったら、結局、体裁だけ整えて、失敗したモデル事業を延命させるだけになるということになり、これは誰が見ても明白な厚生労働省の施策ミス、と言わざるをえないことになる。


Ai検討会の報告書は年内に出ない、そしてこの費用が医療安全評価機構に流れる。この2点を「予言」しておきましょう。この予言が外れたら、その費用がAi に適切に使われることになるので、私の予見力の評価は下がりますが、社会としては素晴らしい結果になるので、私としてはどちらでも構わない、まあ「王手飛車取り」みたいな一手だと言えるでしょう。


さて、来年度予算の行方や、如何。

 

さて、深山氏からの民事裁判の途中経過報告です。一度は9月に判決日時が設定されましたが、山本先生の陳情書により期日延期、証人尋問となりました。そして研究班の内実が、放射線科医からみて、あまりにもずさんだったということを切々と証言してくれました。あまりのひどさに、裁判官もずいぶん唖然とした表情をしていたのが印象的でした。驚いたのは、千葉大法医学教室の岩瀬教授から深山氏サイドの陳情書が提出されたことです。え? この裁判、岩瀬教授はまったく無関係なのに......どうしちゃったんだろう。読むと、山本先生と千葉大Aiセンターの批判、Aiの批判。うーん、あんなにAiに関して黙々とサポートしてくれた山本先生をこんな風に思っていたのね、と山本先生もいたくへこんでいました。それにしても、千葉大の教授なのに、千葉大Aiセンターを大切にしないなんて悲しいなあ、やっぱり千葉大の実績よりも東大つながりの方が大事なのかなあ、と私には思えてしまいました。

 

本訴訟とまったく無関係な方がなぜ陳情書を出すのかは、論理的に不明です。なので当日の証人尋問でも、この陳情書に関しては、ほとんどまったく、誰もひとことも触れませんでした。徒労、というヤツですね。

 

私のブログで行った批判は、すべて公益のためです。Aiをきちんとした形で社会に根付かせないと、大変なことになってしまうのがわかっているからです。深山氏は宝島社との裁判で勝訴しながらも控訴しました。深山氏が何をしたいのかは宝島社が判決当日に出したコメントを読めばわかります。「記事の公益性や社会的意義が認められたのは大きな成果だと考えています」。つまり深山氏は、私の記事には公益性や社会的意義はない、とさせたいのだと思います。あ、これはもちろん、事実に基づく「推察」で「論評」です。あたふた。


今、日本地図をAi実施で塗り替えています。日本の半分近くの地域で、Aiがシステマティックに導入されていることが明らかになりつつあります。最初に戻りますが、こんなにも可能性を秘めたAiを「診療関連死で、解剖の下に置く」という、狭い鳥籠に閉じこめておいては折角の素晴らしいシステムが宝の持ち腐れになってしまいます。深山氏や塩谷先生、医療安全推進室のみなさんにも、是非そのあたりの社会的大義を考えてもらい、一刻も早い、適切な対応をしていただきたいと思います。そうしないと、医療現場の前線で闘っている人たちが討ち死にさせられてしまう。

 

これだけいろいろ申し上げているにも関わらず、実は私はまだ、深山氏と一度も直接の学術論争ができておりません。学問の世界は是々非々なので、是非、病理学会で公開討論会の場を設定していただきたいものです。深山氏にはそれが可能です。なぜなら深山氏は来年の病理学会百周年を記念する病理学会総会の大会会長であらせられるのですから。裁判をするくらいなら、それも同時にやっていただきたいものだなあと、ヒラの病理学会員としては願います。

 

私がなぜ、ブログでここまで深山班を批判するのか、この短いブログだけではたぶん多くの人には理解しかねる部分があることだと思います。なので今、前述の『死因不明社会2』を執筆中です。それを読めば、私がこの研究班を身体を張って批判している理由がわかっていただけると思います。逆に言えば、その背景を全部理解していただくことは、ブログ上だけはとても難しいのです。というわけで、裏付けは2月刊行予定の『死因不明社会2(仮題)』をお読み下さい。

 

さて、長い前置きを終えて、やっと本題の東西のAiセンターの話です。
東は東北大。法医主導にも関わらず、Aiセンターという名称で正式にオープン、そのこけら落としの講演会では、Ai情報センター理事長の山本先生と、厚生労働省・医療安全推進室の渡辺室長が肩を並べて講演されたとのこと。主宰されている法医の先生は、法医学会の地方会で「なぜAiという名称を用いるのか」という質問が出たことがあるそうですが、「だってこれこそAiセンターでしょう?」と答えたところ、会場は沈黙したのだとか。

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