海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.12.10 2010:12:10:20:25:30

東と西のAiセンターは、同じ法医学教室でも全然違う。

5年間の「診療関連死における死因究明制度に資するモデル事業」通称『モデル事業』が大失敗に終わったのは何回も述べました。5年間、国民の血税を6億円も使い、年間200例の解析(つまり5年で1,000例)を目指しながら五年でたった100例(1割)しか解析できない。しかし8月のAi検討会で提出された概算要求には、厚生労働省はモデル事業を継承するシステムに新たに一億六千万の概算要求を行っているのです。さすがに民主党はこれを事業仕分けの対象にしたようで、担当部署は、中身を変えて対応する、という回答をしたようです。

 

さて失敗の原因は解剖を土台にしたからであり、中身を変えて対応するとなると、もはやAiをベースにするしかない。しかし、モデル事業は日本医療安全評価機構と名前を変えたものの変わったのは看板だけ、中身の人は変わらず、相変わらずAiを低く置く解剖至上主義者の巣窟、これでは従来のやり方のままで延命を図っていることは明瞭です。

 

しかし厚生労働省・医療安全推進室はいまだに診療関連死のみの対象とすることに固執している。これはなぜか。日本の死因究明制度全体に関わる議論をなぜしないのか。その理由がようやくわかりました。診療関連死でなく、死因全体の検討となると、医療安全推進室の業務ではなくなるというのです。そうするとおそらく医事課の担当になるだろうということでした。

 

なーんだ、という感じです。つまり診療関連死のモデル事業を失うことは、医療安全推進室の業績が下がる。だから診療関連死のモデル事業の存続に固執し続ける。そしてそのモデル事業は解剖主体だからAiに関しては無視し続ける、という構図です。そして全死亡の1%か2%と言われる診療関連死に特化した死因究明制度を構築し、ほかの99%の死因究明制度に適用しようとしているのです。これではまともなものができるはずはありません。

つまりモデル事業存続は、医療安全推進室の大切な権益の維持、なのです。もしも、医療安全推進室の人たちが、社会のためを考えて仕事をしているのであれば、次のように考えるはず。

死因究明制度自体がきちんとしていない→だから医療関連死問題も解決しない→ならばまず、死因究明制度全体をきちんとしなくてはならない→それは医療安全推進室の仕事ではない→医事課にこの予算をつけかえて日本全体のためのシステムを作ってもらおう。

 

だって5年、6億のカネを無駄遣いしたんですよ? 反省してたら、良心的な組織ならそうしています。でもそうならない。だから厚生労働省医療安全推進室とモデル事業運営体は互いに「共依存」しているのです。そして事業体同士が「共依存」しているのであれば、その構成員のある部分で「共依存」が表出するのは当然でしょう。まあ、どこの誰とは指摘しませんが。これが個人の問題ではなく組織的共依存だということの本質です。そしてなぜそこまでこの事業に固執し続けるかと言えば、各地にモデル事業の事務所ができているからです。でも、どうなんでしょう。5年で百例、1年平均20例の受付をするのに、全国十カ所の事務所が設置され、そこに常勤職員が配置されている。単純計算では一カ所あたり年間2例の受付に常勤職員なんですよ。こんな事務所、存続させる意義が果たしてあるのでしょうか。

 

案の定、12月3日の厚生労働省のAi検討会議では、モデル事業との関連をつけようと懸命になっている、医療安全推進室室長の言辞が目立ちました。モデルチェンジで目先をかわす、という形であやうく喰らいそうになった事業仕訳をかわしたので、ここは何としても、Aiとモデル事業の関連を印象づける答申を出さなくては困るわけです。


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