海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.12.10 2010:12:10:20:25:30

東と西のAiセンターは、同じ法医学教室でも全然違う。

最大の問題点は、この報告書がどのような結論にしたか、放射線科医の参加者が検討していない。少なくとも研究班の放射線科医の主体である山本先生、筑波メディカルの塩谷先生、放射線学会理事の今井先生の3名は、ひと月前に直接お目に掛かって確認した時、報告書は未読だとおっしゃっていました。これって無責任だと思いませんか? 国民の血税を使った研究結果報告を吟味せず、その結果を世の中にばらまいているのです。

 

そう指摘したところ、山本先生と塩谷先生はいたく反省され、この研究報告書を読み込むことを約束してくれました。山本先生は深山氏との裁判で証人に立ってくれ、その際、この研究班の内実を包み隠さず話してくれました。同時に報告書を徹底的に読み解き、そのあまりのずさんさに呆然としていました。「もっと意見を言えばよかったのに」と私が言うと、「でも、言っても聴いて貰えなかったんです」としょんぼりしていました。研究班では、東大の写真があまりに撮影がひどく、研究協力者からクレームが出たという事実もわかりました。

 

これも画像診断の研究実績がゼロの方が仕切ったがために起こった悲しむべきエラーで、結果的に少なくともその部分は血税の無駄遣いになりました。

 

この研究班のAi部分を支えていたと思われる2本柱のもう1本の塩谷先生も、研究班の学術的手法を批判しています。Ai学会1000字提言で、「この研究班はCTを主体にしたものだったが、将来MRIにおける研究班が立ち上がった場合には、踏襲しない方がいい点を挙げる」というやんわりした書き方ですが、明白にその手法を否定しています。それが「Aiと解剖が厳密な盲検で評価されていないこと、有用性、一致分類という2つの評価基準があったこと」という点です。


学術的な素養がある方がよめば、「研究実施の根幹である、診断を独立して比較検討するという当たり前のことが行われておらず、また、画像の評価の基準を二つ設けて、社会的に理解しにくい結果を出した」ということは、基本文法すら出来ていない学術研究だ、という辛辣な評価にならざるを得ないということが明白に理解できるはずです。端的に言えば、この班研究結果を学術論文誌に投稿しても採用されないだろう、ということを塩谷先生は暗にほのめかしているわけです。


でも、だとしたら、この研究班はいったい何を議論していたのでしょうか。報告書を読んだ参加者が、研究の根幹の骨格部分に疑義を投げている。本来なら、そうしたことを議論して、コンセンサスを得て研究班の結論を出す、というのが、班研究の本義であるはず。その部分がまったく行われていなかった、ということの証明にほかなりません。


それはつまり、この研究班に名を連ねた多くの班員と研究協力者が単に「名義貸し」をしただけだったということの証拠になってしまったわけです。学者として大変誠実な塩谷先生ですら、擁護しきれない研究報告だったという事実が何よりも明白に物語っているでしょう。


下記では、山本先生が私の裁判で、この研究班の内実が、放射線科医の意見がほとんど反映されないものであったという告発証言をされていますが、これで深山班ではAi の専門家である班員の山本先生と研究協力者の塩谷先生が、その研究を容認してないという実態が明らかになってしまいました。でも厚生労働省は、この研究班の結果をベースにAiの評定をしているのです。

 

厚生労働省のAi検討会では気になる発言がありました。門田座長が、あと1回では報告書をまとめきれないかもしれない、と予防線を張り出したのです。年内に答申がでなければ、今年度の概算要求に影響を及ぼす可能性が低くなり、結果的に既存のモデル事業への費用導入を容易くします。

 

まあ、来年度のモデル事業についた予算がどこに流れるか、という点を注視していれば、すべてはあからさまになるわけですからあわてることもないのですが。その予算が「医療安全調査機構」に流れるだろう、という予想をもう一度、ここに挙げておきます。そうなったら、それはモデル事業と厚生労働省医療安全推進室のもたれ合い構造が存在する、ということの何よりの証拠になるでしょう。これは予測ですから、これが実現した時には、この推測に大変な裏付けとなります。


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