海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.01.17 2011:01:17:13:09:08

法医学とAi、そして厚生労働省Ai 検討会の顛末

このブログもかれこれ5年目。おかげさまでAiもずいぶん進展し、ゴールがほんのり向こうに見えてきました。振り返ってみると、2010年はドラスティックな年でありました。Ai情報センター創設、厚生労働省にAiの検討会設置、放射線学会、放射線技師会、日本医師会、Ai学会共催のAi研修会が開始。まさにAi元年でした。でもそこにAiにブーイングを続ける病理学会上層部や法医学会理事会の姿はない。そのくせ外部から文句ばかりを言い募る。また、失敗したモデル事業は総括なしで財団法人が立ち上げられ、後継システムの維持に躍起になっている。

 

どうやら官僚は失敗しない人たちらしい。評価せずに続けるだけなら失敗があるはずもない。そして国費は濫費され、国力は衰えていく。失敗モデル事業を継続しよう、という官僚の意思が日本をダメにしている元凶だということに、彼らは気づかない。モデル事業の失敗は、死因究明制度の土台を解剖に据えたから。そこを見直さなければ同じ失敗を繰り返すことになるのです。

 

さて、年明け早々嬉しい発見がありました。なんと『現代用語の基礎知識2010年版』にAiが掲載されていたのです。ついに認知度がここまできたかと感無量です。

 

 

そんな中、ブログで予想した通り、年末の厚生労働省のAi検討会での答申案が先送りされました。次回検討会が早くて二月中旬、下手をすると三月にずれこむらしい。答申案の文案もまだ流れてきません。仕事が遅い厚生労働省・医療安全推進室。文案作りは事務局の仕事、検討会がずれこんでも文案ができれば議論は進むのに。予算が医療安全調査機構に流れれば、国会や審議会で継続させることを議論してないので事実上、官僚が決めたことになる。それはモデル事業を過度に保護しようという、厚生労働省の不適切判断でしょう。そしてAiに費用拠出という、やりたくないことはできるだけ先延ばし。

 

 

この流れの前の、昨年末の一連の流れをおさらいしておきます。

 

 

17日、厚生労働省のAi 検討委員会で答申まとめの議論が行われました。熱心で前向きな議論で、これが本当に厚生労働省の検討会かと思われるような、目をみはる面白い会議でした。検討会では委員全員、Aiに国家が費用拠出せよというのに、厚生労働省・医療安全推進室は何とか費用拠出を曖昧にしようとするという不毛な攻防。「カネは出さないけどで、いいことだから推進してね、その時はこれくらい厳しいことに対応してもらわないと困るよ」という厚労省のスタンスは、いくらお上とはいえちょっと図に乗りすぎ。そもそも検討会の答申では委員が全員、費用は国家が支出をすべしという意見なのにひとり事務局が押し戻そうとすること自体おかしな話で、意見を言うなら事務局としてでなく、医療安全推進室室長自ら委員になるべきでしょう。

 

議論で出た「Aiセンターを全国施設展開せよ」という提言に対し、渡辺室長は「Aiという用語の使用を含め、さらなる検討が必要」と単独でのたまい、報告書からAiという単語を完全に省こうと懸命です。Aiアレルギーの本家本元は厚生労働省・医療安全推進室だったのねと確認できました。現実に大学にAiセンターという名称の施設が出来、今年4月には日本医学会会長率いる自治医大でもAiセンターが旗揚げする(自治医科大学・医療安全推進室・長谷川剛先生からの報告)のに、厚生労働省の情報感覚の古さと鈍さ。情報源が解剖主体の学会上層部しかないんでしょうね。

 

 委員からこれだけ明瞭なノーが出るのも、モデル事業がAiに対し無理解、かつ高圧的に対応し続けた事実が明瞭なためでしょう。委員からの意見がいかに激しいものだったかということは、以下キャリアブレインの記事(抜粋)を読んでいただけると、雰囲気がよくおわかりになっていただけるかと思います。

 

       Ai活用検討会報告書、取りまとめは年明けに―厚労省検討会(1217日 キャリアブレイン ) 

(前略)議論では、モデル事業の活用について弁護士の木ノ元直樹氏が、「この検討会では念頭に置いていない。削除しないと誤解を生む」と指摘。今村聡氏(日本医師会常任理事)も、「今までは(モデル事業での)Ai(活用)はなく、今後入れていくという話だと理解している。今までの報告では、Aiの質が高くなっているというデータはない」と疑問視した。

 

 これに対し事務局は、「予算を取って国の事業としてやっており、Aiを活用していくということで進めている」と説明。モデル事業の実施主体であり、同検討会のオブザーバーとして参加している日本医療安全調査機構の原義人事務局長は、「解剖とAiを突き合わせた今までの経験の蓄積は少ないが、できるだけ症例を集めて、よりAiの精度が上がるようにしたいと考えている」と述べた。

 

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