警察庁が主導する有識者検討会「検視検討委員会」が、「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方について」の中間取りまとめを出しました。いくつかの提言がされたのですが、その中にAiの活用という項目が含まれています。医学的な検索システムとして薬物検査とCT、エコーの導入がうたわれています。 Ai に関する部分「(3)装備資機材の一層の活用」に注目してみましょう。
②CT検査の積極的実施 外表所見、病歴等から死因が特定できない死体のCT検査を積極的に実施する。CT検査については、外表に明確な痕跡が認められず、死因が判然としない死体については、脳出血、くも膜下出血、大動脈解離、大動脈破裂などの出血性病変や骨折等が明らかになり、解剖を行うことなく死因が解明される事例が一定程度存在する上、解剖の要否判断においても外表検査以上の役割を果たすことが認められる。
「CTでは出血がわからない」とメディアで公言し、いまだに発言を訂正しない法医学者もいますが、有識者会議の認識は違うようです。まあ当然です。その上で注目すべきは「解剖を行うことなく死因が解明される」という文言です。ついに警察庁も「解剖と分離したAi」の存在とその必要性を認識したわけです。だが悲しいかな、医療従事者を有識者に含めなかったため、医療現場の現状を無視した、身勝手な提言になっています。CT検査を積極的に実施するというのであれば、読影システムをどうするのか言及しなければ、法医主導の無責任Aiが蔓延します。きちんと検査を行うのであれば、当然医療現場に協力要請しなくてはならず、警察庁から医療現場に、撮像料と診断料をどう支払うか、というシステム構築を急ぐべきで、それに言及しなければ裏付けのない理想論にすぎません。
ただ、その点はご安心を。厚生労働省の「死因究明に資するAiの活用に関する検討会」で、その部分を固めればいい。そうすれば警察庁は、
Aiに関しては厚生労働省の検討会の答申を尊重し、そのシステムを導入する、ということになるはず。今、厚生労働省の検討会では「Aiは解剖ほど役に立ちませんよお」だの、「現場は大変でAiなんてできませんよお」という、消極的姿勢を有する人たちの発表が相次ぎ、それがメディアを通じて伝えられていますが、それでも「Aiは医療現場で行い、放射線科医、もしくは臨床医が診断し、その費用は医療費外から支払われる」というAiプリンシプルに反対する人はいないと思われます。そうなると警察庁との答申とも整合性が出てきます。
この答申で将来的には、警察庁から医療現場にAiの費用が支払われることになるのは明らかになりましたし(解剖と切り離されたAiは、専門家である放射線科医に読影依頼するでしょうから)、診断も放射線科医が行う、という枠組みに、警察庁が従うことも明瞭になりました。
法医学者の画像診断の能力がきわめて低いことは再三再四申し述べてきました。責任あるAi診断をするには、当然警察も放射線科医に頼むことでしょう。するとこの有識者会議が法医学者だけ、しかも議事録をクローズにしているのは異様です。お願いする相手(医療現場)の事情も聞かずに勝手に物事を決めていくなんて、民主主義ではなく単なる傲慢ですから。