海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2010.08.27 2010:08:27:19:49:33

ついに厚生労働省「死因究明に資するAiの活用に関する検討会」で講演。

  2010年8月5日、ところは厚生労働省九階省議室。ついに私は厚生労働省の検討会で、Aiについてプレゼンしました。思えば三代前氷姫から持ちかけられ「氷姫からメールを貰った!」というブログをアップしたのが2007年3月ですから三年半越しの念願です。長かったですね。その間にモデル事業は完全に失敗に終わったことが衆目に晒されましたが、それが晒されたのも政権交代があったからで、そう思うと本当にここまできたのは奇蹟みたいなものだなあ、とひとり感慨に耽ってしました。

 まずは私を参考人として招聘していただいた、本検討会の主宰者である足立信也厚生労働政務官に感謝申し上げます。発表にあたり冒頭、解剖率を厚生労働省に問い合わせたのですが、厚生労働省は解剖率を把握しておらず回答いただけなかったことを遺憾に思うと申し上げました。解剖率という基礎情報もせずに解剖を主体にした制度作りをしようという姿勢自体から、欺瞞に満ちた制度設計であることが浮き彫りにされたわけです。

 講演内容はいつもと同じ、Aiは画像診断だから放射線科医に任せ診断費用を(法医学者でなく)放射線科医に払うようにすること、画像で調べて死因が分かればそれでよし、わからなければ解剖を行うこと、解剖医に任せるとAiを低く見てバカにするから評価は専門家に任せる、の三本柱です。

 私の前に放射線技師会、病理学会、法医学会の代表される方が話されましたが、病理、法医の解剖医の先生方のプレゼンは解剖話がメインで、Aiはおまけみたいでした。Aiに関する検討会なのですから、解剖主体の話をすることはおかしい。その点は発表者に質問しまくりました。なので私が最後に話したところ、学会関係者からの逆質問はナシ。門田座長が「概ねみなさんAi の診断には限界あれども導入すべしという意見ですから、検討会はとりあえず担当部署である医療安全推進室に費用の拠出を予算措置で考えていくことをお願いするということでよろしいでしょうか」との問いかけに、委員は全員賛同されました。医療の代表者の総意としてAiに費用拠出を要求する。これが私がめざしたとりあえずのゴールでした。Aiの提唱者として責を果たした、という思いになりました。モデル事業は破綻したので、Ai主体の新システムを模索すること。そして検査に対しきちんと予算をつけること。ここまでが賛成多数で検討会の決定事項として提示されました。あとは政治家と意向を受けた官僚のみなさんの仕事です。検討会が終わった後、取材陣が医療安全推進室室長に群がって追加取材をしている光景が印象的でした。これまで見てきた検討会で、ここまで厚生労働官僚の方に取材が集まったのはみたことがありませんでした。これからは私は不作為や面従腹背などで、こうした要請が骨抜きやないがしろにされないように注視していこうと思います。

 モデル事業が崩壊したのは、解剖を主体にするという基本制度の設計にしたからです。つまりモデル事業を事前に批判し続けた私の解析は、市民社会にとって有益だったという結論になります。そうした活動の一部表現だけを取り出し民事裁判に訴えた方もいますが、これは公益を考えない悲しむべき行為だと思います。ですがそれもひっくるめての社会なので、裁判結果はまた出るでしょうが、細瑾は顧みず大行に励もうと思います。教授の肩書きもなく、モデル事業関連のAi検討会にも呼ばれなかった私がここまでこられたのは、私の主張を支持してくださった読者のみなさんの後押しのおかげです。

 ここで御礼申し上げます。長い間、ありがとうございました。

 

続きを読む 123