海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.08.02 2010:08:02:17:53:10

ついに厚生労働省の「死因究明に資するAiの活用に関する検討会」で講演を。

 厚生労働省の「死因究明に資するAiの活用に関する検討会」に参考人として呼ばれ、話をすることになりました。8月5日。思えばこのブログを立ち上げた時に呼ばれるはずだった厚生労働省内の勉強会のドタキャンを喰らって幾星霜。何と長かったことか。まあ、そもそも概念提唱者を呼ばないのは、アカデミズムとしては不見識でしょう。一般の方の傍聴もできますから、興味がある方はどうぞ。
 今回の発表は、厚生労働省政務官の足立議員の尽力によって実現しました。この検討会自体、足立議員の要請によってできた会ですから、足立議員の要請があれば当然招聘されてしかるべきです。ところが厚生労働省からの依頼メールは何と条件付き。以下、門田座長からのご注意です。

①Aiについての「草分け的なお立場」であるという点を踏まえてご発言をいただきたい。(第一回目のお二方の先生と重複を避けるという観点から)
②「医師」というお立場からのご発言をいただきたい。
③プレゼンテーションに当たっては「確かな資料」や「客観的な事実」をベースにご発言をいただきたい。
④プレゼンの時間は「15分+質疑応答」(30分程度)とする。

 うーむ、何でしょうこれは。妥当な依頼は④くらいでしょうか。すでに発表した先生に確認したところ、このような注意書きを受けた方は誰もいらっしゃらないようです。ちなみに、私は座長の門田先生とは面識はありません。なのでこの注意書きを寄越したのは、実は門田座長の本意ではないと思っています。もしもこれが座長本人の意向だとしたら、発表前に面識のない発表者に対し予断を抱いているわけですから、中立的な座長の資質に欠けることになります。そんな方のはずはありません。よく知らないけど(笑)。
 もし万が一、これが座長の意向でないとしたら、いったい誰の意向でしょうか(笑)? ちなみに私は内閣府や法務省からも諮問されましたが、このような条件をつけられたことは一度もありません。
 タイトルは「社会はAiをどう扱えばいいのか――解剖医にAiを主導させてはならない理由」の予定です。「確かな資料」は、「厚生労働省の深山研究班報告書」、「客観的な事実」としては「モデル事業が5年で7億円以上使い、年間200例の解析を目指しながら、5年で105例、つまり目標の10パーセントしか達成できず失敗に終わった」という事実と「医師会の報告書」の数字、並びに厚生労働書に依頼してこれから教えてもらう、最新の解剖率(今は2010年ですから、2009年の解剖率、ということになりますね)をデータとして使おうと思います。
 メディア報道では、解剖医の領域から「解剖と比較して Aiは診断能が低い」という枠組みがほとんどでしたが、その結果、Aiを過小評価する印象が植え付けられています。そこで私は解剖の問題点を指摘し、Ai がそうした問題を解消する、というプラスメリットについて話をします。
 解剖至上主義者は言います。「Aiは死因確定率が3割と低いから解剖を必ず行わなければならない」。これだとAi実施率は解剖実施率を超えられません。肝心の解剖率も3パーセントを切っている。同じデータを使い、私はこう言います。「Aiは死亡時画像診断であるから、CTやMRIを使う。CTを使った場合の死因確定率は3割と低いが、その3割は確定できるので、まず優先的に Aiを実施、それでわからなかった症例には従来通り解剖を行う」
 どちらが市民社会にとって前向きの提言でしょうか。
 私が検討会で話すことは、「何が何でも解剖を」と言っていたら死因究明制度は破綻しますよ、ということです。なぜ? 今だって解剖は実施率3パーセント未満なんですよ? 実質は破綻している、と言わざるを得ないじゃないですか。

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