海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.03.24 2010:03:24:11:31:39

法医学会上層部が目論むAi導入は、遺族に対する死因情報提供を阻害する。

 法医学者は検視現場の現状をあまり知りません。なぜなら運ばれてくる遺体の解剖で手一杯だからです。そして現場で医療とどのようにコラボしているかということについても実体験としては無知です。唯一の例外が東京都監察医務院ですが、ここはあまりに特殊なので、一般化できません。東京都監察医務院は年間予算八億円、非常勤を合わせると四十名以上の法医学者が在籍している。実に日本の法医学者の半数が偏在しているのです。
 だからこの検討会が導き出す結論は、おそらく法医学者に都合のいい、しかも検視問題解決には何の役にも立たない、現実に稼働できないような仕組みになると予測されます。
 さて、この会議の行く末を予測してみましょう。予測できるということは、会議をする必要がないセレモニーだということですが(笑)。余談ですが、私は3月29日(日)にNHKスペシャル「人体"操作"(仮)」という番組のナビゲーターをします。取材を通じ『米国は研究者の良心を信じ自発性に任せる、英国は議論をしてコンセンサスを形成し、規制をかける』という実状を知りました。日本社会はどうかというと『会議あれども議論なし』とまとめました。是非ご覧になってみてください。
 話が逸れました。この検討会の結論を予測します。
 まず参議院選挙前の5~6月あたりに提案書を提出、それを大新聞やテレビを中心としたメディアが大々的かつ無批判に取り上げます。中身は都道府県単位に『法医学研究所』(名称は違うかも・笑)を作る、そのモデル事業として全国数カ所の法医学教室を指定、予算をつけよう。結論の意図は単純で、法医学者を増やし、もっとお金を下さい、という主張でしょう。そしてここがキモですが、そのモデル施設を中心にして死後画像についても法医主導での導入を試みる、というものもこっそりまぎれこまそうとするはずです。
 なぜそんな予測ができるのでしょうか。
 それは法医学者の上記のメンバーのほとんど(4、7、9、10)が、自民党と公明党がちょうど一年前行っていた「異状死問題を考える議連」で意見発表しているメンバーだからです。ちなみに私もそこに無理矢理参入させていただきましたが(イノセントゲリラの祝祭の解説を書いて下さった元議員の橋本岳氏のおかげです)、今回は見事に梯子を外されてしまいました。なぜならそもそもその議連の基本は法医学会が提唱するシステムの導入をめざすというものだったので、私は異分子だったのです。つまり警察庁が立ち上げた検討会は、旧政権・自民党と官僚が主導し導入しようとしたシステムを、確たる議論もなく警察庁という役所主導のまま民主党政権に呑み込ませようというもので、中井国家公安委員長がその枠組みをそのまま容認しているのであれば、政治家主導の政策という民主党の掲げた御旗の一画が崩れてしまったという何よりの証拠になってしまいます。
 かくして官僚は、ゾンビのようにやりたいことは執念深く何回も復活させます。そして大新聞やテレビといった主要メディアは官僚が発信した情報を無批判に垂れ流します。なぜなら、大メディアと官僚は、記者クラブという仕組みを通じ馴れ合い構造にあり、情報統制されているからです。でも、まだ是正するのに遅くありませんよ。

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