海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.03.24 2010:03:24:11:31:39

法医学会上層部が目論むAi導入は、遺族に対する死因情報提供を阻害する。

 警察庁が設けた死因究明制度の在り方を検討する有識者研究会(座長=佐藤行雄・日本国際問題研究所副会長)が行われています。「死因究明制度研究会」と略称されるこの会の正式名称は「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会」というのだそうです(何で新聞は正確に報道しないんだろう)。それにしてもどこかで聞いたことがあるタイトルですね。頭を「診療関連死における」と変えると、厚生労働省のモデル事業そっくりです。
 これは「犯罪死に関してだけ」の死因究明制度の研究会で、以下のメンバーです(敬称略)。
座長 1佐藤行雄(日本国際問題研究所副会長)
座長代理 2川端博(明治大学法科大学院専任教授)、3岩井宣子(専修大学法科大学院副院長) 4岩瀬博太郎(千葉大学大学院法医学教室教授)、5落合義和(法務省刑事局刑事課長)、6兼高雅仁(警察庁刑事局長)7影浦光義(福岡大学法医学教室教授)、8小室歳信(日本大学歯学部法歯学教室教授)、9中園一郎(長崎大学大学院法医学教室科教授)、10福永龍繁(東京都監察医務院院長)
 佐藤座長は外務省を退任後、国家公安委員会委員を歴任して、日本国際問題研究所にお勤めだそうですが、どんな団体なんでしょう。国際問題研究所なのに検視問題検討会の座長って、何だかなあ。
2川端氏は刑事法が専門分野の、明治大学法学部教授。東大大学院ご卒業だそうです。
3岩井氏は東大法学部卒、専門は刑法、刑事政策で専修大学法科大学院教授。
4岩瀬教授は千葉大学法医学教室教授、東大卒。
5落合氏と
6兼高氏は担当省庁関連の委員ですね。
7影浦氏は九州大学薬学部をご卒業された福岡大学法医学教室教授でご専門は薬物中毒分析。
8小室氏は歯学部教授で、日大法医学教室出身。ご専門は歯形による個人識別です。
9中園氏は長崎大学医学部をご卒業された法医学教室教授で、日本法医学会の理事長です。
10福永氏は神戸大卒業で、東京都監察医務院の院長です。
 こうしてみると集まった人たちは法律家、警察関係の方々、そして法医学教室関連の方のみです。特に法医学者偏重は著しく、医師関連はすべて(4、7、8、9、10)法医学関連の方たちです。こうしたメンバー構成は、センスなさすぎです。このメンバーでは検視問題の本当の問題点を理解できないからです。
 解剖の適否を決定するのは医療現場では臨床医、捜査現場では検死官(警察官)もしくは警察医であり、彼らが解剖適用を決定すると、解剖係が解剖します。それが医療現場では病理医、捜査現場では法医学者、というわけです。

解剖適用決定 解剖実施
医療現場    臨床医                         → 病理医
捜査現場 検事(代行検視で警官、検視官)・警察医(臨床医)  → 法医学者

という構造になります。つまり解剖請負係の病理医も法医学者も、解剖適応決定には参画できない構造なのです。上記検討会のメンバーを見ると解剖請負人、しかも捜査現場に限定された人のみ集められています。このメンバーでは検視現場で起こる本当の問題点は認識できないでしょう。

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