では日本で今、このような大規模災害が起こり、仮にその遺体検索にCTを行おうという話になったら、どういう事態が想定されるでしょう。あちこちに分布している(日本には、CTが1万5千台設置されている、諸外国に例を見ない高インフラ終了国家なのです)を使って、画像検案を行うことになるのは目に見えている。大災害なのですから、可能なインフラは適切に転用するのは当然です。そうなったら、医療現場でAiが行われる確率は高いでしょう。でも、それは社会が必要とする重要なニーズなのです。
そうした事態に対応するためにも、医療現場で普段からAiを行っておく必要性は高い。これこそが新しい死因究明制度でしょう。ならば、Aiセンターという新しい制度を医療現場の創出する意義は高い。法医学会提唱の『死因究明医療センター』などよりは、はるかに汎用性が高い、普遍的な施設が設立されるでしょう。
ところでこうした他国の医療情報が、メディアを通じて表に出ないのはどうしてでしょう。まさか、捜査情報だから表に出せないなどということはありますまい。なぜならこれは、「遺体には解剖が行われた」という程度の情報にすぎず、秘匿が義務づけられるのはもっと個別の医学情報だ、ということくらいは素人が考えてもわかるからです。
遺体全例にCTが行われている、という情報は決して隠匿すべき捜査情報ではない。もし仮に、これすらも捜査情報だから、司法関係としては公表できない情報だというのであれば、日本においてはやはりAiの情報は司法領域に任せてしまうと、まったく表に出されなくなってしまう。何しろAiを行ったという情報すら、法医学会にかかっては隠蔽されてしまうべき情報になる、というわけなのですから。まあこのオーストラリアの情報が正しいかどうか、についてはこれからの報道を見ていただくしかないのですけれども。
もしも法医学会がこうした情報を隠す方向に動くとしたら、理由は何でしょうか。簡単で、Aiに関しメディア世界でイニシアティヴを取りたいからです。
法医学会を中心に、死因究明制度を何とかしようという議員連が立ち上がり、その報告を、4月上旬までに発表しようと画策している動きがあります。
なぜ、4月上旬なのでしょうか。
答え。4月17日、放射線学会で私の特別講演があるからです(笑)。まあ、冗談はさておき、実は翌4月18日に、放射線学会で「Ai」に関するシンポジウムがあります。ここで、放射線学会専門医会において、「Aiに関するワーキンググループ」が立ち上がったということが発表されます。つまりAiに関し、専門家でありもっとも実力のある画像診断医が本腰を入れて取り組むということが公表されるわけです。そうなったらAiに関しては、法医学会としてもその意向を無視できなくなる。というより、システム導入に関してはきちんと相談しなくては、社会制度を作る責任ある立場の人間としては拙いことになる。だから、その結果が公表される前に、法医学会の形を決めて公表してしまえ、というメディア・コントロールの意図がある、のかもしれません。それに合わせてオーストラリアの火事での話も出せば、法医学会の提言に追い風を吹かせることができる、と考えている、のかもしれません。
もしもそうでないというのなら、せっかく画像診断の専門家である放射線科医がAiについてシンポジウムを企画したのですから、そのシンポジウムに参加し、意見を開陳し、そのことも考慮に入れてゆっくりと提言を作ればいいのではないでしょうか。こうしたメディア・コントロール意図は、事前に見透かされるとその効果を失うどころか、逆効果にすらなりかねないので、十分にご留意を。
2009.03.02
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