海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2009.03.02 2009:03:02:17:36:03

『 Aiセンター構想 』vs.法医学会提唱『 死因究明医療センター構想 』

 ここで法医学会が提唱する『死因究明「医療センター」構想』に対抗した観点から、『Aiセンター構想』を経済的効率の観点から見直してみましょう。
 2008年12月24日付けのCBニュースによれば、
「解剖一体25万、異状死解剖剖検を1万5千体増やすと、37億5千万必要になる。増加分の解剖医は、剖検医一人当たりの年間解剖数を100体とすると百五十人の解剖医の増加が必要。人件費が医師7億5千万、技術、事務職員は52億円、人件費総額60億。解剖経費と人件費100億に施設代等の経費」
これでどうやら年間240億円なのだそうです。
 これが年3万体、解剖するのに必要な経費です。

 解剖による死因確定率が最大でも8割程度だということは、先日、千葉大の岩瀬教授との対談で直接聞いた情報です。では240億の増加費用で、何名の死因が確定できるでしょう。3万×0.8で2万4千人です。
 では、ここで『Aiセンター構想』を。
 解剖制度は現状のまま、いじりません(解剖制度の改革は、法医学会や病理学会にお任せします)。
 「Aiセンター構想」では、日本の年間異状死死者15万人のうち、いくらで、どのくらい死因確定できるでしょうか。
 まず医療現場にCT検査、MRI検査費用が必ず入るように配分するように確約します。これでかなりの数の医療現場の協力が得られます。
 15万人全員にCTを施行。一体2万円、30億円。CTの死因確定率は三割ですから、ここで4万5千人の死因が確定します。わかりやすくするためにちょっとおまけして、5万人の死因が確定するとしましょう。次にCTでわからなかった症例残り10万体にMRIを施行します。一体五万円で50億。MRI による死因確定率は六割ですから、6万人の死因確定。
 つまり年間80億円の増資で、死因確定者が11万人になるのです。こうしてから残り4万人をこれまでの解剖に回す。解剖できるのは1.5万人だから、その8割は1.2万人になります。
「Aiセンター構想」では、80億円の増資で合計12万人の死因が確定されました。同じ費用を法医学会提唱のシステムに投入すると、死因確定されるのは2万4千人。『Aiセンター構想』では、実に5倍の死因確定が保証される。これは、経済的な苦境の中、驚くべき数字だと言わざるを得ません。
 人件費100億はそのまま流用しますが、検査費用が拠出されれば、現場の医師たち28万人が積極的に対応してくれる可能性もあるので、対象症例が15万体以上に広がっていく可能性は確実です。 つまりこの200億を医療現場に、医療費外から注入するシステムさえ作れば、日本の死因究明率は確実に上昇します。そして、コストパフォーマンスはきわめて高いものになることは間違いありません。これが『Aiセンター構想』のポイントです。こうした試案があるのに、民主党も自民党も、法医学会に引きずられた政策提言しかできていません。視野が狭く思考が硬直しているのは、残念なことですね。 さらに『Aiセンター構想』が導入されれば、実は解剖関連の人たちにも素晴らしいメリットがあります。解剖前に、専門家である画像診断医による詳細な読影情報が手に入るのです。これが解剖する身にとってどれほど有益か、はAiを実施した現役の病理医が実感しています。医学的にも妥当な組織だと思いますが、いかがでしょう。
 しかも240億の費用が、医療費外から医療現場に流入する。医療崩壊を助ける一助になることは間違いないでしょう。放射線学会が公式に理事会の見解として掲げている、「Ai に関する費用拠出」も担保されるため、放射線学会の総力を挙げた協力が得られることになる。
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