海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2008.10.29 2008:10:29:17:08:55

千葉大Aiセンターの概念拡張とその完成

  メディアのみなさん、市民のみなさん、今後は死亡時画像に関しての取材や疑問点はAiセンターへどうぞ。そうすれば今回のクローズアップ現代のように、死後画像を扱いながら番組中で一回もAiという言葉が出ない、という不思議な事態はおこらなくなるでしょう。これはNHKの取材班の勉強不足でしょうか。それとも報道に何か隠された意図でもあったのでしょうか。建前としては、法医学の死因究明の問題を取り上げたからというところでしょうが、それならなおのこと、番組中では岩瀬教授がCT画像を提示していましたが、読影したのは放射線科の山本先生で、それはAiセンターとの共同システムだということをひとこと紹介すべきではなかったのでしょうか。ああした画像が流れると法医学者がCT診断をしている印象が大衆に刷り込まれてしまう。しかしそれは上述のように、現状では不可能なシステム構築へのミスリーディングにつながり、最終的には社会的な不利益につながります。
 そういえば、千葉大法医学教室のCTの試みが紹介されていましたが、放射線科の山本先生は一度も画面に登場されませんでした。この6月には至急のお願いということで、私の所にAiに関し同番組スタッフが取材にお見えになった際、山本先生や塩谷先生をご紹介させていただいていたんですが(笑)。
 おそらく、同じNHKの番組でも、まったく別動隊の番組だったのでしょう。でも、縦割りでも情報を流す時には、せめて同僚同士ですりあわせをお願いしたいものです。同じNHKの同じ番組取材班なんですから。

 何はともあれ、死亡時画像の部分については、Aiセンターという呼称で統一したモデル組織が千葉大に無事完成しました。このようにして画像診断の専門家である放射線科医や放射線技師にリスペクトを払うことは、日本のアカデミズムの向上のためにも大変有効であり、社会的モデルにもなります。 
 千葉大学医学部法医学教室・岩瀬博太郎教授の英断に拍手を送りたいと思います。

 この話を書いていて、筑波メディカルセンター病院の塩谷先生(Ai研究の世界的な第一人者)と初めてお会いした時のことを思い出しました。塩谷先生はPMCTという、検死CTという用語で多くの研究をされておられましたが、お話をしてからたった一分で「わかりました、Aiという用語で統一して運動していきましょう」と即答されました。思えば2003年6月のあの瞬間から、Aiの社会的ムーヴメントが始まったのです。その動きが、現在、崩壊寸前の日本の死因究明制度の立て直しの切り札として機能しようとしています。
 今回の岩瀬教授の英断は、その瞬間のことをありありと思い出させるものでした。

2008.10.29(海堂 尊)
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