海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2008.10.29 2008:10:29:17:08:55

千葉大Aiセンターの概念拡張とその完成

  こうした象徴が、医療行政の無責任です。最近一番わかりやすかったのが、厚労省の舛添大臣と石原都知事の、東京の妊婦死亡事件における舌戦です(ゴジラ対ギャオス)。彼らは国が悪い、都が悪い、とお互いを非難しあっています。その裏には、自分たちの責任回避が透けてみえる。
 一方、御遺族はご立派で、医療現場の苦渋を理解し今後こうした問題を繰り返さないで欲しい、と切々と訴えられている。
 われわれ医療従事者は、上述のふたりの首長にとやかく言われても何とかしようなんて気持ちはまったく感じませんが、今回のご遺族の言葉に打たれなかった医療従事者はいないでしょう。そうした声を聞けば、本当に何とかしなければ、という気にもなります。ですが現場がそう感じ、動こうとするとき現場の動きに対応してくれない象徴が、上記のおふたりに代表される、医療行政機構なのです。何しろいまだに、医師を増員するという動きに異を唱える厚生労働官僚がいるらしい。上記の事件の主犯は、医師の適正人員を確保してこなかった医療行政の不作為にあるのではないか、と私は思います。
 これはひとごとではありません。誰が見ても導入すべきだと思われるAiの社会導入を阻んでいるのが、実は医療行政の一部の人たちだというのと同じ構図なのですから。彼らの口癖はこうです。「導入にはエビデンス(証拠)が必要です」。死後画像の有用性についての学術的論文は多数ある。この上、何のエビデンスが必要なのでしょう。その間にも、地方では多くの御遺体が死亡時検索されずにただ死亡診断書を惰性で記載されているというのに。
 さてまもなく、そんな医療行政の問題に初めて真っ向から斬りかかった小説、『イノセント・ゲリラの祝祭』が、宝島社より刊行されます。テーマはまさしく「医療事故調査委員会」設立の動き、アンド、司法と医療の相克、という話で、物語としては不定愁訴外来担当田口が厚生労働省に殴り込みます。(田口:何で俺が......)どうぞお楽しみに。
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