海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2008.10.29 2008:10:29:17:08:55

千葉大Aiセンターの概念拡張とその完成

  まず、CT検診車の件では結果を出したにもかかわらず「大新聞の一面トップで千葉大のCT実験の結果が報じられることになっていたのに、警察の圧力で急遽とりやめになったり」「警察とはいろいろありましたし、マスコミは及び腰だし、司法解剖の窮状についてお役人に何度訴えてもナシのつぶてだし、ああ、いくら騒いでもこのまま終わるのかな、と半分やけくそ」だったそうです。ところがノンフィクション・ライターの柳原氏と民主党細川議員の政策担当秘書石原氏との三人から始めたメーリングリストや「アルコール消毒会という名の会合(?)(原文ママ)」を重ね、地道な活動につなげた結果、2004年8月には司法解剖予算として一体あたり2万円の薬毒物検査費が加算され、2005年1月には「大規模災害時の際の身元確認業務及び死因究明に関する質問主意書」を提出、民主党の「死因ワーキングチーム」の第一回講演者には柳原氏、第七回には岩瀬教授も発表されているという成果があったということです。そして「2006年度から司法解剖一体あたり、それまで7万円だったのが約20万円に引き上げられた」のだそうです。(以上、岩瀬博太郎・柳原三佳著『焼かれる前に語れ』(WAVE出版)より抜粋引用)
 これはまったく素晴らしい業績で、こうした国家の土台を培う部分を、有意の法医学者と国会議員秘書とジャーナリストの三人で動かすことができたというのは、本当にすばらしい(逆に言えば他の審議会など、大勢の人を集めて十分の一も成果を出せないのだから何をやっているのやら)。
 たとえば病理解剖費用を拠出させるという要求ひとつさえ厚生労働省から引き出せない病理学会理事会などは、是非見習ってもらいたいと思います。議員秘書とジャーナリストと現場医師。これだけで国政が動くきっかけが作れるのですから。

 このような活動のため、やはり日本の法医学としては傍流中の傍流である画像診断の研究に関し、じゅうぶんな時間が取れなかったという事情はよくわかります。その結果、国際的な法医学分野では、日本の画像診断領域はあまり進んでいないというレッテルを張られてしまいました。9月に行われた日独国際法医学会のシンポジウムの演題に日本人の演題が一題も取り上げられていなかったということもその現れでしょう。でもこれも仕方がないことです。日本における死亡時画像の第一人者の岩瀬教授のこの3年の上記の活動を見れば、多くの人は納得することでしょう。何しろ司法解剖制度が潰れてしまっては元も子もなく困るのですから。
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