海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2008.10.08 2008:10:08:17:04:28

CTは白黒画面だから、出血がわからない?

 ここのところ、難しい医療の話が多い気がします。でも、今はとっても大切なポイントなので、しばらくの間はご容赦を。ですがその前に、まずはかるく近況から......。
 まずご報告。東大病理学深山教授が掲載差し止めを求めていた件は、提訴取り下げの方向で検討されているらしいです。本訴するとかしないとか、本訴の訴状が出版社に届いてから取り下げるとか、いろいろごちゃごちゃ言ってい ようですが、担当の加治弁護士は何と医師とのダブル資格を持った方で、実はこの厚生労働省の研究班の一員です。そして過去には深山教授の研究室に在籍していたこともある方であることが判明しました。つまり債権者と非常に強い利害関係を有しているわけです。ここまでこの問題に深く関わっている弁護士さんがバックについていると、社会的な常識を飛び越えて、意地で本訴してくるかもしれません。でもそれって訴訟権の濫用では? 教授と弁護士が一体化した、社会的強者の攻撃って本当に怖いものですね。どうぞお手柔らかに。

1)宝島社のシリーズ最新作『イノセント・ゲリラの祝祭』が刊行されます。帯の惹句をこの間ちらりと見せてもらった私は思わず蒼白に......。
「厚生労働省をぶっ潰せ  田口白鳥の最強医療エンタメ、ついに霞ヶ関へ」
 ......あの、中には確かにそんな台詞もあった気もしますけど、いくらなんでもそんな......。さすがにこれはまだ一試案、本番は変わるらしい。どきどきです。
 新刊の中身は、今医療界で話題騒然「医療安全調査委員会設立」の話。これは胡散臭さがぷんぷん漂う話で、救急学会が猛反対しているのに、一部の厚労省寄りの医師たちは一日も早く成立させようと躍起になっている、大問題の組織です。検討不十分なのに、関係者は「小さく産んで大きく育てる」などと言って、一日も早い成立をめざしているようですが、この国の官僚が主導して作ったもので、小さく産んだものが、途中で適切に作り替えられていったことなんて果たしてあったでしょうか。初期の設定がきちんとしていないと、社会に害悪を垂れ流す。後期高齢者医療制度しかり。新臨床研修医制度しかり。ここのところ、厚生労働省が打ち立てた施策で市民社会にプラスになったものって、ありますか(笑)?
 そもそも厚労省はこの委員会を「医療安全」なる名称で立ち上げていますが
これこそ大いなる欺瞞でしょう。何しろ患者団体の集会ではいまだに堂々と、「医療事故調」のままで通しています。会合に頻繁に顔出しをして発言をしている厚労省担当室長(物語では、白鳥に相当する立場の方ですが、白鳥と違って全然違って立派な紳士です・笑)も、公称している組織と違う名称を患者団体が使っているのに文句ひとつ言わない。つまり厚労省は医療関係者に口先で医療安全といいながら、遺族に対しては医療事故調だと言っているわけで、こんなにみえみえでわかりやすい二枚舌行為も滅多にないでしょう。そんな厚労省にこの一件で、田口センセが殴り込みに行くわけですから、果たしてどうなることやら。
 お待たせしました。11月初旬、一年半ぶりの続編、発売決定です。
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