監察医:横浜市の運用、来年度廃止の方針
神奈川県は、横浜市での監察医制度の運用を来年度から廃止する方針を固めた。昨年4月の死因・身元調査法施行に伴い、監察医解剖と同様に遺族の承諾を必要としない「新法解剖」が可能になったため、廃止しても大きな支障は生じないと判断した。今後は監察医ではなく、解剖医が解剖する。
監察医制度は戦後、公衆衛生の向上を目的に創設された。予算が比較的潤沢で解剖医を確保することのできる自治体だけにある制度で、横浜市のほか、東京23区▽大阪市▽神戸市▽名古屋市で運用され、死因のはっきりしない遺体の解剖などを行っている。
横浜市では2012年度、1707件の監察医解剖を実施し、うち1673件を1人の医師が担当。解剖の集中で質に対する懸念が生じていることが、毎日新聞の報道で判明していた。横浜市の監察医制度は遺族が解剖費用を負担していた。新法解剖になれば公費で負担する。ただ解剖医を確保することが困難な現状に変わりはなく、質の向上につながるかどうかは不透明だ。【一條優太】
これはついにあの、保土ケ谷事件を起こした組織としても悪名高い横浜市監察医務院が終焉を迎えた、という報道です。一連の毎日新聞報道の、ひとつの大いなる成果でしょう。
論理立ったペンで、世の中が変わったのです。
もちろん、問題はあります。記事ではやんわりと触れていますが、横浜市の監察医が一人で年1673体もの解剖をしていた、という信じがたい事実について、その「監査」がされないまま、幕引きをしようとしています。
横浜市監察医務院の闇は深い。それが、かつての神奈川県警の不祥事と分かちがたく結びついていた、という観点で報じた報道は少ないように思います。でも、それはおそらく真実で、要は、司法解剖や行政解剖など、法医学者の解剖を無鑑査状態に放置すると、それは警察の冤罪発生源になる、ということです。
これを「治療」する方法は簡単です。死因を捜査情報から外し、遺族と社会に対し情報開示を行ない、法医学の業務を第三者が外部監査する、ということです。これは決して大改革ではなく、「まともな」組織であればどこでもやっている最低限のことです。ですから、もしもそれが法医学分野において「大改革」に見えるとしたら、その方がむしろ恐怖ですね。
というわけで、きっと「英明な」法医学会は、横浜市監察医務院の廃止を受けて、そうした「監査体制」を自ら築く努力をしてくれることでしょう。
さらに、「昨年4月の死因・身元調査法施行に伴い、監察医解剖と同様に遺族の承諾を必要としない『新法解剖』が可能になったため、廃止しても大きな支障は生じないと判断した」とありますから、今後は東京都監察医務院も、大阪府監察事務所も「廃止しても大きな支障は生じない」でしょう。
これは私がかねてから主張していた、新法解剖ができれば、監察医制度は廃止しないと、組織が焼け太りするだけだ、という主張と一致します。
この点に関しては是非、法医学会の統一した、正式見解を聞いてみたいものです。毎日新聞の一條記者は、是非、法医学会に突撃取材してみてください。